6.《ネタバレ》 ソビエト時代の宇宙開発を扱った映画としては「ガガーリン 世界を変えた108分」(2013)、「サリュート7」(2016)、「スペースウォーカー」(2017)といったものがある。この映画の「スプートニク」は、原義としては旅の道連れといった意味のようだが、世界最初の人工衛星の呼び名でもあり、これも新手の宇宙開発映画なのかとミスリードする意図があったかも知れない。
実際は荒唐無稽なSFモノであって実話系でもないわけだが、それでも日本国内向けの宣伝にある「SFサバイバル・アクション」というよりは、上記の宇宙開発映画の延長上の印象がある。栄光の歴史の暗部を扱ったのがこの映画だ、と断言するほどではないかも知れないが、事故の隠蔽や作られた英雄像など明らかに批判的な姿勢を見せている。
物語としては、浮ついたところのないサスペンス調の展開でじっくり見せる感じになっている。SF的な独創性はあまり感じないが悪くはない。
ドラマ部分のテーマは親子関係ということかも知れない。添い寝するとか玩具を与える場面では、宇宙生物を人間の幼児と似た感じに見せており、このまま成長を続けるとすれば、飛行士は持てるものを子に与えて死んでいく父親のようだともいえる。主人公は自分が孤児だったこともあり、この男を生体兵器の育ての親でなく、孤児院にいる本当の子の父親にしてやりたいと思ったのだろうが、しかし父子の両方を助けるのは無理であり、せめて自分が親代わりになって子を助けようとしたらしい。
結局「皆を助けようとする」主人公の理想が否定された話にも見えるが、それなら何が優先なのかを問う話ともいえる。具体的には宇宙生物か飛行士か孤児院の子かの選択が迫られていたが、さらにいえば体制の維持強化か個人の栄達か、あるいは親子愛が守られる世界のどれが大事なのかということかも知れない。終盤では、ガガーリンが言ったとされる(劇中飛行士も言っていた)“神はいなかった”を否定するかのような台詞も出ていて、これが主人公の進む道を照らしていたと思いたい。
登場人物では、孤児院にいた子どもは役名が「Child in Orphanage」となっていてはっきり誰とは書いてない。子役のVitaliya Kornienko(2010年生まれ)は性別が女子である。
ほか雑談として、英雄は戦車に乗っているもの、と主人公が語っていたが、向こうで英雄といえば戦闘機乗りなどよりT-34戦車とかで爆走するイメージなのかも知れない。また「陸軍元帥ロバート・デュヴァル」とは何の冗談か(TV「将軍アイク」1979か)。日本なら三船敏郎元帥だ。