18.《ネタバレ》 この作品から最も強く感じられることは「正しさ」とはなんだ?という想いでした。正解のない世の中で、何が間違ってるかもわからなくなります。そんな想いが最も伝わるのは、主人公の教師をやっている妹の感情でした。彼女は序盤で、マスダ君という少年の母親が実際に病気であるかも確かめずに、自分の意志や考えを信じ切っているからなのか、自分なりの答えを押しつけてしまいます。物事には、どんなことでも多面性があり、「これはこうだ!」なんて一方の事実から得た情報で決めつけることはあまりにも危険なことだと思っています。だからそれをしていた彼女の真面目さというか、正しさを追い求める姿がどうなっていくんだろうというのが最も興味深い作品でした。自分の家族や仕事、そして自分自身を信じていた彼女は、その全てが離れていき、そして自信を失っていきます。自分は「正しい」と信じたい彼女の思いがよく伝わってきます。だから、終盤で兄を裏切る走るカットと電話のシーンが痛々しく感じられたんだと思います。その後の鼻歌が力強かったのも理解できました。そして、ラストシーンで蛇イチゴが食卓の上に置いてあるそれを見た彼女の失意の表情。親に裏切られても、婚約者に裏切られてもへたり込みはしなかった彼女がへたり込むという事は、自分自身に裏切られた、あるいは自分自身への信頼の喪失を描いていたのかも知れません。自分自身を見失うことはそれこそ、生きた屍だと思います。巧いなぁ~と思いましたが、できればその失意から這い上がってくるところの方が見たかったです。「ゆれる」ではそれが描かれていたように思うので、個人的には「ゆれる」の方が面白かったです。 【ボビー】さん [DVD(邦画)] 7点(2008-06-27 00:05:33) (良:2票) |
17.《ネタバレ》 不思議と最後まで観てしまう力を持った作品だ。 それだけ観る者を作品世界へ吸引する力を持った作品と言えるであろう。 表層的にいたって平凡で幸福な家庭が、ある日突然ガタガタと音をたてて崩壊していく。 その様を、非常に緻密に巧く描いている。 この巧さは、今日の日本映画界において傑出している。 そして女性を美しく撮る監督さんだ。 女性なのに、何故か男性が興奮するような女性の撮り方をする。 興奮とは言っても、決してエロティックな意味ではなく、純粋に女性を美しく撮るのだ。 「なんて美しいのだろう」 と、観ているこちらは興奮するわけである。 女性が女性を美しく撮ったというものではなく、それは明らかに男性目線の美しさ。 この監督って、レズビアンなんじゃないか?と疑ってしまう程に、驚くほど男性が女性を撮るような形で、女性を美しく撮るのだ。 ところで本作だが、少々解りにくさが無いわけではない。 最後の終わらせ方も、明解というわけではなく、観るものの想像に委ねる様な形の終わらせ方。 でも、これが余韻を残し、なかなか良い。 本当に、巧い監督さんだなぁ、と感心してしまった。 脚本家としての巧さ、監督としての女性を美しく撮る巧さ。 それらを併せ持った天才女流監督だ。 【にじばぶ】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-03-25 23:39:58) |
★16.次作『ゆれる』でもそうですが、ある事件をきっかけに「家族が家族でなくなってしまう」ことの恐怖を描く西川監督の容赦ない演出には本当に驚かされます。決定的な絶望を与えない代わりに分かりやすいハッピーエンドも与えず、観賞後もしばらく「あの一家はどうなってしまうんだろう?」と考えずにはいられなくさせる圧倒的な説得力はホント体に良くないです(笑)。で、この『蛇イチゴ』。宮迫のキャラに若干リアリティが乏しいのが残念ですが、とりあえず蛇イチゴのエピソードでチャラ。本作も絶妙なタイミングでの幕切れでした。 【とかげ12号】さん [DVD(邦画)] 8点(2007-09-29 18:41:24) |
15.何とも微妙なところをつく内容ですよね。 「血縁」が情報でしかなくなってしまった関係でも情が湧いてくるから不思議。 人間は記憶に支配されているんだな~、としみじみ。 【カラバ侯爵】さん [DVD(邦画)] 6点(2007-09-01 21:19:04) |
【NIN】さん [DVD(邦画)] 8点(2007-04-07 05:20:31) |
13.何とか見ずに過ごしたい真実を、ばしっと目前に突きつけてくる。 そのシャープさは、切られたみたいにヒリヒリとさえ感じられる。 そして見たくないはずなのに、どんどんお話に釣り込まれ、セリフに聞き入ってしまう。 とてもワクワクと観ている自分に不思議さも覚える。 西川監督の迫りかたって凄いと、しみじみ実感。 同じ日本人同じ女性、そして私よりずっと若い監督をとても誇らしく思います。 これからも真実の作品を撮って欲しいです。 【たんぽぽ】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2006-11-26 23:09:31) |
12.《ネタバレ》 個人的に信じられないほどすきな映画です。なんとなく樋口一葉の「大つごもり」を思い出した。わたしは一葉のなかでは「大つごもり」がもっともすきな作品。西川美和監督に新しい才能を感じたし、宮迫博之はたぶんこれ以降評価が変わることは間違いがないだろう。家族みんながそれほど大きくもないこじんまりとした家のなかで、それぞれに誰にもわからない暗闇をもち、そのほころびは大きく破れそうになっていく。映画のなかに答えはなく、もちろんハッピーエンドでもない。土のついた蛇イチゴに蟻が這い、そこに光があたっている映像がたまらなくすき。 【はちかつぎひめ】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2006-08-31 23:08:17) |
【michell】さん [DVD(邦画)] 6点(2006-08-13 22:36:57) |
10.ストーリーはどうしようもなく暗いはずなんだけど、どっかユーモアがあって、製作者の人間や社会に対する愛が感じられる映画。宮迫がすごくよかった。 【kaneko】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2006-05-31 11:07:38) |
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9.見ていて疲れる映画でした。全体に救いようがなく、ストーリーも人物もかなり苦々しい。ある意味リアルな世界の中でこそたった一つの真実が美しいのかも。でもちょっとわざとらしい 【用量】さん 5点(2005-02-17 01:49:21) |
8.表層的に取り繕われた平和の中で価値観を培ってきた人間が、その背後にある真実が露見しても尚、自らの価値観にしがみ付く様を描いた異色ホーム・ドラマ。本作に登場するのは父、母、婚約者、そしてホームルームで正義感ぶる女子児童等の偽善者と、露悪な兄。既に偽善者達に裏切られた主人公は、「兄は悪である」という最後の価値観が崩壊することに恐れおののき逃げ出してしまう。兄の本意は遂に明かされませんが、彼は妹にとって唯一の真実を残して去っていく。それが「蛇イチゴ」。宮迫博之以下、周りを固める役者陣に対し、つみきみほが少し弱い気もしますが、テーマ性、リアルな脚本と登場人物、そして充分に面白い娯楽性は、今の日本では橋口亮輔に匹敵するかもしれません。という訳で、7点献上。 【sayzin】さん 7点(2004-10-29 00:36:55) (良:1票) |
7.現代家庭の破綻、をうまく描いているが、同じテーマの「家族ゲーム」に一歩(二歩?)譲るか。 破天荒な家庭教師の登場で家族の破綻が明るみに→嘘つき(詐欺師)の兄の帰宅で嘘で塗り固められた家族の本音が明るみに、と内容も非常によく似てはいる。 でも、せっかく宮迫を使ったのだから、最後はもっと派手な終り方にしたほうが良かったと思う。 「あっ、もう終わり!?」って感じで、何かすっきりしなかった。大人し過ぎる。 【なおてぃー】さん 5点(2004-09-21 01:13:04) |
6.作品としては嫌いじゃないのだけど、つみきみほの演技が鼻についた。「半落ち」の鶴田真由も私はだめだったけど、なんか似たような印象。ストーリー自体は飽きずに見れた。 【もちもちば】さん 6点(2004-07-18 20:41:40) |
5.俳優、宮迫の実力を垣間見る事ができる映画。 お調子者でずる賢いのになぜか憎めない。 彼じゃないとこの役は務まらなかったのだは…脚本もなかなか。 テンポもちょうどいいさじ加減で、最後まで楽しめました。 【ふくちゃん】さん 6点(2004-06-02 18:07:30) |
4.80年代あたりの新しい家族のあり方を描いたような映画に、当時のアイドル女優(つみきや深津など)を使った少女映画(なぜか山に入り何かを悟る)をMIXして今に置き換えるとこんな映画になりましたという感じ。悪くは無いが真新しさはまるで無い。 【亜流派 十五郎】さん 4点(2004-05-15 01:45:30) |
3.DVDの特典で宮迫が「ほんとど~しようもない家族の話だけど、なんか最後まで見てしまう映画です。」ってことを言っていた。言いえて妙。テンポもよかったし、所々に散りばめられた笑いもよかった。 【よっふぃ~】さん 7点(2004-05-06 15:51:13) |
2.面白さにおいて最近の邦画でこのレベルってそんなにないんじゃないですか?。映画通からいろいろいちゃもんつけられそうですけど・・逆に褒められもしそう・・。日本のどんな家庭でも転落しそうな、すぐそこに覗くことができるような深淵をわかりやすく見せてくれました。この映画は日本人ならそう落ち着いては見られないと思いますよ。かなり幸せな人は別でしょうけど。つみきみほが昔から好きだし、監督が美人だし(映画の中身とは関係ないけど・・・)、個人的に話が他人事とは思えずグサッときたので10点。追記:自分の他のレビューの点数との兼ね合いからしてやっぱ9点。 【しったか偽善者】さん 9点(2003-11-26 23:58:02) |
1.なんだか、古典的な雰囲気と新しい感性が不思議に入り混じった作品でした。表向きは健全だけど実は破綻しかけている家庭の、何とも言えない居心地の悪さや微妙な「ズレ」の表現の仕方、笑いへの転化の仕方がとっても面白かった。役者陣もみんな良かったし、宮迫博之のひょうひょうとしてていかにもウサン臭ーいお兄ちゃんもいい味出してました。ラストは結構唐突で、一瞬「あれ?」と思ったのですが、不思議な感じの余韻が残ります。も一回ビデオで観てみたいなー。ちなみに監督の西川美和は28歳の新人。これって今の日本映画界ではかなり凄いことなんですよねえ。頑張ってほしいなー。 【ぐるぐる】さん 7点(2003-10-13 15:46:20) (良:1票) |