144.何といっても凝った映像や独特のカメラの構図などが良いと思う。
決して奇をてらったわけではなく、技巧に酔っているわけでもない、余韻を感じさせるというか、心の内面を描くというか、何かを語っているような映像だと思う。
特にセリフがないシーンや、誰も映っていないシーンにも何かを感じずにはいられない。
こういった撮り方にした理由の一つとして、本作のテーマにも関係している気がする。
「孤独」「疲れ」「苦しみ」「悲しみ」を描いているから、何もないシーンでも何かを訴えくるのではないだろうか。
そしてそれらの感情から逃れる方法が、人と人との結びつきなのだろうと感じる。
ココロの隙間を埋める方法として、チョコレートを用いられていたが、それこそやはり代用品でしかなかっただろう。
デブの坊やにとっては父親のいない家庭の寂しさを埋めるものとして、ハンクにとっては家族がバラバラで黒人に対して偏見を持ち、恐らく職場での人間関係が上手くいっていないような寂しい心を埋めるものとしての逃避的な役割でしかない。
デブの坊やにとって必要なのは父親であり、母親の愛情だったし、ハンクにとっては本当は亡くした妻や息子だったのだろう。
息子を憎んでいたようにみえて、いなくなってから本当は非常に愛していたことに気付くとは遅すぎた。
しかし息子の死によって、彼の心は変わり、黒人であるレティシアを助ける気になった。
二人の偶然の出会いが二人の孤独な人生を助けるものになっていく。
やはり、人間に必要なのはチョコレートではない、人間なんだろうなと思わせる。
まあ、ラストではチョコレートがハンクと秘密を知ったレティシアを繋ぐ役割を果たしているようにも見えたが。
本作でレティシアを演じたハルベリーがアカデミー主演女優賞を獲得したが、息子を亡くした後、自分を女に戻してとハンクに頼むシーンはかなりのものだった。
その他にも、息子のことをデブだと笑いながらも悲しむ姿やハンクの秘密を知った後の呆然とした姿やラストシーンなどなかなか評価できる演技は多かったように思える。