2.《ネタバレ》 アニメのことはよく知らないのだが、凄まじい映像に圧倒され「とにかく面白いスパイダーマンを観たぞ!!」という満足感で劇場を後にした。
実は鑑賞したのは去年なのだが、数週間くらいしてから不意に「冒頭でマイルス君がいい感じの曲(Sunflower)を聴いていたな」と思いだし、何となくYoutubeでMVを検索してみた。
…やはりとても良いじゃないか!
メロディも良いけど、(個人的な解釈ではあるが)ピーター・BとMJの関係を想起させるような詩もグッとくる。そんなこんなで本作「スパイダーバース」に思いを馳せながらヘビロテしていると、「あの映画…めっちゃ面白かったなぁ」と改めて実感。なんか余韻があるのです。
(他の曲もめっちゃかっこいいのでオススメ)
「スパイダーバース」と言えば、今まで途方もないアダプテーションを経たスパイダーマンというヒーローが一堂に会すぶっ飛んだシリーズだ。コミックスでは東映版のスパイダーマッ!やボンボンで連載されていたヤツまでもが出てきて日本でも話題になった。
さてそんな超絶変化球を原作とした本作だが、奇をてらう場所はしっかりかき回し、しかし描くところはド直球。
そんな計算されつくした作りがとても良い。
色んなスパイダーマンが出てくる独特の世界観はもちろんこの映画の特徴、そして面白さに直結する。
そしてピーター以外がスパイダーマンになるというプロットを用い、スパイダーマン誕生譚というマンネリを上手く打破出来ている。
そればかりではない。「クモの下り何回やるねん」というメタ的なユーモアとしても面白いし、予測不能のスパイダーマンが多数出るからこそ「ヒーローとは?」というテーマを明確に炙り出していく。
伝え方も上手い。
実は「スパイダーバース」には奇抜なスパイダーマンが多く出るものの、スパイダー・ハム、ペニ・パーカー、ノワール(ニコラス・ケイジの声がいい)は「同じ次元に来た」こと以外には、まったくと言っていいほど、話の動きには絡んでこない。彼らを強烈な世界観を醸成するサポートに徹しさせているのである。
「ヒーロー誕生」を描くに当たりコレは絶妙の采配である。メンターにピーター・B、サポートにグウェン。彼らが未熟なモラレスを導いていく。あれだけのスパイディに色々と口出しさせたり、トラブルを起こさせていたら、これほど締まった脚本にはならなかっただろう。ぶっ飛んだ世界観ながら、マジメで実直な構成を貫けている。
では「スパイダーマン」とは何か。答えはクライマックスに最高の形で気付かされるように用意されていた。
マイルズの父と共に、観客が拳を握りしめて「立て!がんばれ!」と心からの声援を送る人物。それこそが親愛なる隣人の姿である。
凄い映像に熱いストーリー、本当に面白い映画を観たなぁ。