124.《ネタバレ》 この作品を超えるホラーはまず有りません。有り得ません。
この作品はホラーとしてあまりにも素晴らしすぎる。
まず素晴らしいのはドキュメンタリーのように自然な演技だ。
これが演技というものを超えている感じがする。
それがこの作品のリアリズムを高めているんだと思う。
映像全体は乾いた異様な雰囲気が漂う。退廃的でシュールだ。
ラジオの音声がなんとも不思議な空気を作る。
狂った人々が沢山出てくるのが面白い。
この狂い方というのがまるで常軌を逸している。
演技では到底出来るとは思えない気狂いぶりが凄い迫力。
家の不潔で病的な雰囲気も全く素晴らしい。他のホラーがやってもこうは出来ない。
そして音の表現が見事で生理的に来る。
チェーンソーを使ったホラーは多いが、どれもこの映画のチェーンソーほどの迫力はない。
伝説の鬼ごっこ場面も他のホラーで真似っこしてるのをたまに観るけど
全く退屈でお粗末なのが多い。
この作品の鬼ごっこは後ろに迫って来ている迫力が凄い。それで退屈しない。
家に着いたときのレザーフェイスの切り替えしがなんともカッコイイ。
不潔の長髪男も発狂ぶりが素晴らしい、彼は生理的に不快なものの固まりだ。
動きがなんともいえない。
コック(2のドレイトンさん?)は最も狂っている。笑いながら怒ってるところが素晴らしい。
フランクリンという車椅子に乗った青年の演技がまた見事。
人間をハンマーで屠殺する場面は名場面過ぎる。足の痙攣、鉄の扉が閉まる時の不安、
その恐怖演出はあまりにも自然に行なわれることで恐怖が余韻のように倍増する。
僕がこの作品を好きな理由は神がかり的なところ。
トビーフーパー監督の他の作品と比べても、明らかに出来が違う。
そういうところにトビーフーパー本人の力量以上のものを感じてしまう。
最も凄いのは凄惨で暗く残酷で生理的に不快なものをリアルに描いているのに、
観ていて全然嫌にならないし暗い気分にならないというところ。むしろ快楽みたい。
映像魔力が強く、人物描写や背景が奇妙なのでカルト映画的なところも少しある。
見事な映像作品だ。
以前に映画雑誌のインタビューでトビーフーパーはこの作品で自分がレッテルを貼られた気がするといっていた。