2.戦争の残酷さとそこから立ち上がる人間の強さを、女性の視点で描いた異色の戦闘ドラマです。
かつて弁護士として平穏な生活を送っていたバハール。
しかし、ある日突然クルド人自治区の故郷がISの襲撃を受け、家族や大切なものを失ってしまいます。
息子は連れ去られ、男性が皆殺しにされ女性たちは無慈悲な扱いを受けます。
バハールは息子を救い出し、自らの尊厳を取り戻すため、
女性だけで構成された武装部隊「太陽の女たち」のリーダーとして戦場に身を投じるのです。
本作の大きな魅力は、「女性が戦士として戦う」という新しい視点にあります。
被害者であったはずのバハールが、悲しみと怒りを胸に戦士となり、戦い続ける姿に強い衝撃と共感を覚えます。
また、戦場での出来事を記録する片眼を失った戦場記者マチルドの視線を通して戦闘が描かれることで、
まるでその場に自分がいるかのような臨場感を味わえます。
それにより緊張感や人々が抱える深い悲しみ、そしてどこか儚くも美しい瞬間が浮かび上がってくるのです。
監督のエヴァ・ユッソンは、現実に起こったISによるクルド人自治区での惨劇に触発され、自ら現地に足を運んで取材を行いました。
そのため、映画には実際の出来事に根ざした説得力があります。
映像美にもこだわりが感じられ、戦闘シーンでのまるで表情を抽出したようなクローズアップによるダイナミックなカメラワークと緻密に計算された構図。戦闘シーンの静と動を美しく融合させています。
そのためか、戦場の混沌とした情景と、バハールの緊張が混じりあい、印象深い映像となっています。
女性が闘うということで勇敢な女性たちの姿を期待してしまうのですが、そんなものではなかった。
戦争がもたらす悲劇や、無力感を現実の戦争に立ち向かうことで彼女たちがどう変わって、そこで得るものはいったいなんなのか。
重い気持ちで知ることになります。
それこそが監督が訴えたかったものではないかと思うのです。