15.《ネタバレ》 迷子になったのか、それとも親に捨てられたのか、という少年。とある長屋に連れてこられ、よりによって、長屋でも一番コワそうなオバチャンが世話をする羽目になる。まさに、鬼ババアってヤツです。バカだの、汚い子だのと、まあボロクソ。そのやり取りが、何とも可笑しいんですが、見てるうちに何だかホロリと来ます。いやこれがホントに。 最終的に描かれるのは、やはり、別れ。一刻も早く出て行って欲しい時には別れられないのに、別れたく無くなったときには、別れざるを得ない。結局、家出後の再会も、動物園も、写真館も、すべては別れへの前奏曲だった、ということでしょうか。 少年の父親が突然現れ、形式的な挨拶をし、別れ自体は機械的に進められていく。ここでこれが、娘を嫁に出す笠智衆だったら、絶対に涙を見せず寂しい笑みを見せるところですが、そこは鬼ババアですから、鬼の目にも涙、ってヤツです。 戦後の混乱期、ならではのオハナシでもありました。 ところで、こうやって見ると、小津作品でもフォーカス送りって用いられてるんですね。茅ヶ崎から帰ってきた場面で、奥の人物からゆっくりと手前の人物へとピントが移動したり。手前の鉄瓶から奥の人物へとピントが移動したり。 【鱗歌】さん [インターネット(邦画)] 9点(2022-05-23 22:44:43) |
14.《ネタバレ》 小津さんの映画は、ほっこりするね。 昭和の戦後の高度成長の頃だろうか? 出稼ぎで上京してきた親子の子供がはぐれて、長屋にお世話になる。 まぁそういう話なのだが、この頃は本当に貧しくて、ルンペンと言われるような 乞食のような子供もいたから、長屋の人たちは、最初は子どもを邪険にする。 ところが強情なのだが、どこか憎めないこの子に、情が移って来る。 最後のおたねさんの涙の訳を聞いて、長屋のみんなは「ほう」と思う。 分かれて悲しくて泣いたのでなく、その子供がどんなに嬉しいだろうか、思って泣くのである。 もうこういうハートの分かりやすい映画は昨今ではないねぇ・・ 【トント】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2019-08-09 14:34:14) |
13.《ネタバレ》 小津安二郎監督の戦後第一作で、長屋を舞台に親とはぐれて拾われてきた少年の面倒をいやいやながらに見ることになった女性・おたね(飯田蝶子)を主人公に、人情味あふれる長屋の人々がイキイキと描かれた小津監督らしい人情喜劇で、戦後第一作にしてかなりの傑作だと思う。子供を無理やり押し付けられ、最初は邪険に扱うもだんだん情が移っていくおたねの心情の変化が丁寧に描かれていて実に良い。おたねの心情の変化が最初に感じられるのはやはり干し柿のシーン、盗み食いしたと疑われて怒られ、疑いが晴れても泣き止まない幸平に対して干し柿を差し出すおたねの優しさがなんともあたたかくてたまらないし、次の日おねしょをした幸平が家出したのを本気で心配しているのも良い。(また最初のように幸平が笠智衆演じる田代に拾われて戻って来るのが笑える。)そのあとの写真館のシーンもこの子とずっと一緒にいたいというおたねの心情が良く出ていて、しかし、誰もいない写真館の部屋を映すことによってこの後の展開を暗示しているのが切なく、忘れられない名シーンだ。その夜に幸平の父親が迎えに来て別れた後のおたねの涙は幸平が実の父と会えて良かったというのと、別れることになったつらさ、両方ある涙だと思うのだけれど、とてもあたたかい涙で、とても感動できた。主演の飯田蝶子の演技も素晴らしく、小津作品で飯田蝶子と子供というとやはり「一人息子」が思い浮かぶが、本作もそれに並ぶ飯田蝶子の代表作といえるだろう。小津監督の喜劇センスや子役に対する演出も相変わらずうまく、幸平を茅ケ崎に連れて行くのをくじで決めるシーンのイカサマや、置き去りにしようとした幸平がおたねにずっとついてきて結局一緒に戻ってきてしまうシーンも笑える。もちろん、笠智衆や河村黎吉といった脇役陣も良い味を出していて、中でも笠智衆の口上シーンは印象的だった。それにおたねとおきく(吉川満子)の何気ない会話シーンも良かった。チョイ役ながら殿山泰司や小沢栄太郎が小津作品に出演しているのは珍しい。冒頭から戦後間もない時期であることを感じさせる映画なんだけど、いちばん最後のシーンであふれかえった戦災孤児たちが登場したのを見てこの時代こういう光景が当たり前のようにあって、まだまだ戦争の傷跡が身近にあったことを考えさせられた。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 8点(2017-06-04 18:41:28) |
12.《ネタバレ》 結構残酷な内容のはずなのに、何故か笑ってしまう不思議な映画でした。幸平は戦争孤児という設定なのに、体型がふっくらしているというのが可愛らしいんですよね。飯田蝶子演じるおたねも、どこか憎めません。怒りっぽいが情に弱い一面も持ち合わせていて下町のおっかさんと言った感じでしょうか。茅ケ崎の海岸に幸平を置き去りにしようとするシーンなんか、下手な監督が撮ればただの鬼婆ですよ。そこを、子供が追いかけてきてだんだん距離が縮まっていくショットを観せ、最終的に一緒に家に戻ってしまうことでほっこりさせてしまう。このあたりの演出が上手いなあと思います。 クジではめられるシーンやぶかぶかの帽子など可笑しい場面はいくつもありましたが、一番笑ったのが、あれだけたくさん芋を買ったのに、幸平の父親がお礼に芋を持ってきたところ。あれは爆笑でした。 今回改めて小津監督は喜劇作家であることを実感しました。本作が公開されたのが昭和22年。この時代にこんなにも明るい戦争映画が日本で制作されていたことにも驚きました。 【スノーモンキー】さん [DVD(邦画)] 8点(2017-03-18 01:40:23) |
11.うん、やっぱりこれでやられたんだと思う、飯田蝶子の魅力に。 小津作品を通した他の役者という意味では東山千栄子の時もそうだった。「東京物語」でのの~んびりとしたおかあはん役を観た後に、黒澤監督作品「白痴」(1951) でのギスギスした年配女性役を観ると、この人ただもんではではないと思わされたもんだった。今回はそのときの感覚とどこか似ていて、ここまでのところ飯田蝶子といえば常に人のよい「かあやん」役だと思い込んでいたのが、本作のような脚本において正直者で根は悪くなんだろうけど、とにかくそこいらにいそうな品の悪い「おばはん」役をピシャッと演じられると、「一本とられた」的な気分になるのである。 でもやっぱり主役は…。 「青木放屁」といささか悪ふざけの過ぎる芸名の子。突貫小僧こと青木富夫の異父兄弟とのことで、かれらのおかんは今で言うステージママだったのだろうか、とにかく小津監督に拾い上げられて開花した才能。小津の「子役撮りコメディ万歳」な感じがあちこちにあふれている作品である。 ちなみに彼の父親役をちょい役で演じていたのが、小沢栄太郎であったということには即座に気づけず。相変わらずこの人も演じ分けが素晴らしい。最近の記憶では木下惠介作品「花咲く港」(1943)、「女」(1948)、そして溝口健二作品の「雨月物語」(1953) にて。これら観比べてもらえば納得してもらえるはず。 【kei】さん [映画館(邦画)] 7点(2014-05-13 10:32:23) |
10.紳士録というから男ばっかりかと思いきや、何と何と主人公は男勝りのおば(あ)さん。「あ」の字を入れるか入れないか微妙な年齢。笠智衆さんが拾ってきた男の子を、口や態度ではやっかいものとしながらも、次第に愛着を覚えていく過程が実に良く、表情が何とも言えない。ラスト近くの「親子っていいもんだよ」と言うあたり実感がこもっている。戦後まもない頃の映画だけに、音声が大きくなったり小さくなったり不揃いで聞き取れないところが多少あるのが残念だが、復興期の心温まる作品であることに間違いない。小沢栄太郎、笠智衆らの若き姿にも驚く。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 8点(2013-08-24 21:05:26) |
9.飯田蝶子と吉川満子の二人が中心という時点で、少しテンションが落ちた。 笠智衆が珍しく歳相応の役をしていて新鮮味アリ。 【にじばぶ】さん [ビデオ(邦画)] 6点(2008-02-16 08:22:56) |
|
8.声を挙げて笑わせ、最後にホロリとさせる人情喜劇の大傑作。特に笠智衆の唄う「覗きからくり」の口上は大好きだ。笑いにポイントを置けば、飯田蝶子と吉川満子の会話の可笑しさに尽きる。この二人といえば 『淑女は何を忘れたか』を想い出すが、本作でもさり気ない日常会話の妙を堪能。あと、青木放屁の無表情でみすぼらしい子供も良かったし、河村黎吉はいつ観ても巧いなぁと唸らせる。そうそう、写真館のシーンも忘れられない。顔がほころんでいく「かあやん」の心情を思うと温かくも切ないシーンであった。 【丹羽飄逸】さん [地上波(邦画)] 10点(2007-01-19 20:11:49) (良:1票) |
★7.《ネタバレ》 見ていて心が温かくなる、「日本映画っていいなあ」と思わせる映画です。あの男の子が父親と再会した後、おばさんは子供がまた幸せに暮らせることを思って嬉し泣きをします。もちろんつかの間の親子関係がなくなったことに対する悲しみもあるでしょうが、いずれにせよ、何て美しい涙でしょうか。戦後の苦しい生活の中でもこうした人と人との触れ合いがあったのですね、昔の日本には。STING大好きさんが指摘されているように写真館のシーンは斬新ですね。私は写真をとり終わった後、人のいない写真館のシーンをみて、「あのおばさんと子供が親子として暮らすことは結局実現せず、二人の親子写真はまぼろしで終わるということなんだな」と思いました。配給、焼け跡、多くの戦争孤児等、戦争直後をほうふつさせるシーンが沢山あり、その点でも興味深い映画です。今の子役のようにあえて可愛い顔の子を使わず、どこにでもいそうな子供を使ったこともよかったと思います(三角くじをあてたお隣の子供の方が顔はかわいいんですけどね)。 【ピュルテ】さん [ビデオ(吹替)] 8点(2005-11-03 22:21:35) |
6.《ネタバレ》 小津監督、この監督の描く世界はどれもこれも人間味に溢れていて、好感が持てる。この作品にしても最初は子供なんかいらないとかなんとか言ってたものが、次第に子供が好きになり、最後はもう好きとかいうよりも子供って良いねえ!親と子って良いねえ!なんてそんな風にいかにも小津監督らしいタッチでしみじみと描き、本当に小津監督の作品はどれもが日本的で好きです。そして、相変わらず小津監督の作品には欠かすことの出来ない俳優の一人、笠智衆さんんが良い味、出してます。益々、小津監督の映画、他の作品も出来ることなら全部、観たくなりました。 【青観】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2005-08-27 20:40:11) |
5.後年の小津監督の映画はハイソな家庭が多いが、この映画は長屋の庶民がよく描かれている。子供がついて来たんで拾ってきたという今では信じられないようなことが、戦後間もない頃は当たり前で、上野の山に戦争孤児が溢れかえっている。当時はこういった子供が食うために犯罪を犯す事も多いんで、少年犯罪が最も多かった時期でもある。警察もまともに取り合ってくれないからか、自分たちの問題として解決しようという長屋の人々、世知辛い世の中と言いながらとても暖かい人々上手くが描かれている。 【亜流派 十五郎】さん 8点(2004-05-09 13:40:11) |
4.小津マジックに完全にやられた。このたった72分の間に、自分の心は激しい化学変化を起こしたようだ。それが何によるものなのかが分からない。一体何が起こったというのだ。未だにキツネにつままれたままである。 |
3.《ネタバレ》 長屋の人々の率直な人情が描かれて面白くも感動的でした。始めに子どもがやってきたとき「いらないよ」と本気で言い合う大人の姿が描かれているから、終わりに子どもとのお別れのシーンで、「ほんとうの父親が見つかってよかった」というのも本気でおばちゃんがそう言っているというのが感動的に伝わってくる。おばちゃんも子どももいいお顔立ちをしているのもリアルでいい。 【柴田洋子】さん 10点(2004-02-07 09:33:53) |
2.《ネタバレ》 おたね(飯田蝶子)が為吉(河村黎吉)、喜八(坂本武)とクジを引く場面がケッサク!!全部にペケが付いてるイカサマとも知らず、気の早いおたねは自分が貧乏クジを引いたと宣言して茅ヶ崎行きを余儀なくされる。河村黎吉も得難い名脇役だったよなぁ。笠智衆扮する田代の隠し芸「覗きカラクリの口上」場面といい、戦後復帰第1作!みたいな気負いもなく飄々とした小津のユーモアが味わえる貴重な一篇。個人的には初期の小津作品の方が好きかな。 【へちょちょ】さん 8点(2004-01-10 11:45:10) |
1.戦後って感じかなり漂ってます。笠智衆さんかっこいいです。あの訛りや歌もいい。おばちゃんはきついけどおもしろい。最初子供を海で捨てようとするシーンなんかは残酷ですね。「おやかましゅう」ってのが印象に残った。 【バカ王子】さん 8点(2004-01-10 07:28:29) |