3.《ネタバレ》 基本的にはメイキングだろうが、ほぼグループのメンバーだけに焦点を当てていて、例えば劇中であれだけ存在感のあった黒木華さんはほとんど出ていない。またメンバーを除く1~2年生もどういう人々だったのか紹介くらいはしてもらいたかった。このグループのドキュメンタリーにするために普通のメイキングではなくなってしまったのは残念だが、しかし本編では断片的にしか使われていない本物の高校演劇(「まくら投げ」ではなく「修学旅行」という題名らしい)の現場も見られるので、そういうものを若干ながら復活させている意義も認めるべきかも知れない。
中身を見ていると、いくら著名アイドルでもそんなに監督に甘えていいのかと思う場面もあり(一応怒られた場面もあった)、また一人芝居の緊張に耐えかねたメンバーが監督に泣きついて、見かねたスタッフが引き離したりしていたのは笑える(この人はいつもこうなのか?)。それでも恐らく自分を人に見せること、人の心を動かすことでは実績があり、アイドルとしての存在感も十分なメンバーだからこそ、監督のいう「コール・アンド・レスポンス」なるものが成り立つ素地もあったのではないかと想像する。
ただの一般人ではないにせよ役者としての積み重ねはまだまだ必要で、その過程を本物の演出家や映画監督が出てきて見せていたわけだが、自分としても完全な部外者ながらその場に立ち会って、映画づくりの現場を体験したような気分ではあった。特に原作にもあったワークショップや、本物の高校演劇への参加の場面では、実現しなかった自分の人生の可能性を思う気にもなる(まあ無理だったろうが)。
なおナレーションではメンバーの「成長」を強調していたが、これが本人らにとってどの程度の成長だったのか自分にはよくわからない。また監督の「こんなに一生懸命映画作ったことない」という言葉もお愛想だった(あるいは本人がモノノフだから?)かも知れないが、これは手間のかけ甲斐のある出演者だったからこその言葉と取れなくもない。
自分としては別にファンでもないのでこれで感動する動機も義理もないわけだが、それでもそれなりに映画の完成を喜ぶ気になって、少ししあわせになる映画だったので、ここは感じた通りの点数をつけておく。無関係と思っている人間も巻き込んでいくのがアイドルの力ということだろう。