72.《ネタバレ》 対人距離設定不全症とでも言うのか。ヒロインは道で男にぶつかると、その触れた肩を神経質に何度も払う。でもポルノショップに堂々と入っていって、集中してくる男の視線には何ともない。覗く人でありながら、見られることには全然平気。固い殻を持っているからなのか。「私には感情がないの、あるとしても知性がまさっているの」って人。彼女がいかに孤独を完成させたか、って話だ。この題材だったらコメディにしたほうが楽だっただろうが、それをギリギリの悲劇にしたことを、この作品に関しては褒めねばならない。笑ってしまえば、変わり者で終わってしまう話だ。でも、心臓から血を流しながらウィーンの町を毅然と歩いていくラストで、彼女は、誰でも落ち込み得る罠に正面から対決した悲劇の英雄以外の何者でもなくなる。シューベルトのピアノ曲の妖しさが生きた。十二音音楽のシェーンベルクを弾けばミスタッチが分からない、ってのがおかしい。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 8点(2008-06-25 12:13:05) (良:1票) |
71.《ネタバレ》 エリカ先生がバスルームでカミソリ握りしめて・・・・のシーンは、「痛い、痛い、痛い!やめとくれやすーーーー!!」と叫んでしまいました。画面上の人物がなにをやらかすのかわからないのが「ハネケ流」なので油断大敵ですね。個室ビデオのエリカ先生、お車で見る映画館でのエリカ先生・・・エリカ先生の超ド変態プレイの数々は、どこかもの悲しさも手伝い、痛々しいですね。 【ふぉんだ】さん [DVD(吹替)] 6点(2007-11-08 20:00:37) (良:1票) |
70.《ネタバレ》 なんというか、ある程度の年齢に達した人間の心の傷や闇を暴き立て、そこに塩をすりこむような嫌らしい作品ですね・・・・。しかし、イザベル・ユペールの迫真の演技などもあって、心をつかんで離さない不思議な魅力を持つ映画です。後味は悪いですけど・・・・・。 まあ、あんまり自分を抑えこんでしまわず、ほどほどに生きていった方が良いということなんでしょうね。 【TM】さん [DVD(吹替)] 7点(2007-10-06 21:33:49) |
69.《ネタバレ》 ずっと前、美保純が気に入った映画として紹介していた。どうでもいいけど、美保純。ハネケ作品の中ではメジャーな位置にある一品みたいだ。が、やっぱり私はハネケ映画に謎解きしか求めていない不埒な観客だった。「隠された記憶」に興味を持ったのはそういうことだ。 で、比較的メジャーとされる「ピアニスト」は、私の謎解き欲を全く満たしてくれなかった。 淡々とした日常動作を単調な演出で延々と見せる合間に突然衝撃的な場面を入れるとかいう手法はもう慣れてしまったし、「ピアニスト」では途中からエリカの妄想をそのまま流しているだけだし…それにしては、「どこからが妄想なのか」という推理もそれほどしたくはならない。面倒な気すらする。 ラストの発表会の日にエリカの顔が全く腫れていなかったことで、「妄想だよ」とハネケはバラすけれど、バラされて感心するようなオチではない。と私は思う。ここでウォルターが朗らかな態度を取ることで、手紙自体も渡されていなかったとわかるし、おそらくホールのトイレ場面から妄想なんだろう。どうでもいいけども。 で、ついでにいうと、自宅のバスルームでのカミソリ場面から母親の「まあやだ、気をつけてよ」については、変態性を強調するというよりはエリカが生理の無い女性であることをハネケが強調したかったのだと思う。生理が無い、未だかつて来たことがないのか、妊娠以外の理由で来なくなってしまったのかは不明だが、とにかく現在無月経。なので、自傷行為癖も兼ねて、「ちゃんとある」ということをわざと母親の目に触れるようにしたということだと思う。…ここにきて、映画という媒体にタブーはあるべきなのか、などと考える。エリカが月経のあるふりをしたい、というところを表現するのはいい。そのために自傷までしているという脚本でもいい。…が、それをしているところをあんなふうに見せるのは私は断固批判したい。あなたはしょせん男でしょう。女性に対して敬意を払うべき。と主張したい。この場面は女性を侮辱している、と私には感じられる。 ハネケについてはいろいろな評価があると思うが、「既存のもの(作品、表現)」に対するアンチという気負いが非常に強く感じられ、ショッキングな描写を売りにするのは本当に感心しない。残念だ。 【パブロン中毒】さん [CS・衛星(字幕)] 0点(2007-09-25 15:32:52) (良:3票) |
68.「妄想女のイタイお話」と言ってしまえばそれまでなのだけれど、この映画は、そんな一言じゃ済まされない、もの凄い映画です。なにが凄いのか、というと、まず、その性描写。これは、日本人が日本人で撮ったら安っぽいポルノになる可能性大の、めちゃめちゃリアルな描写です。なのに、見ていてもちっとも「感じない」。むしろ、眉間に皺が寄ってきて、かろうじて目を背けずに見ているのが精一杯。さらに凄いのがブノワ・マジメルの見ているものが引いてしまうほどの演技。この役を演じるのは、大変なエネルギーと想像力を要するはずなのに、若い彼はそれをこなしてしまった! そして最後の凄いは、イザベル・ユペールの演技力。無表情なのに、エリカの心の叫びの聞こえてくる迫真の演技は、鳥肌が立つほど。本当に仮面のように表情は変わらないのに、なぜこうもエリカの気持ちが伝わってくるのだろうか。とにかく、最初から最後まで「すごい、スゴイ、凄い」の連発。でも、一番の「凄い」は、ここまで人間の醜さ、哀しさ、滑稽さを、容赦なく残酷なまでに、果ては思わず笑いが起きるほどまでに描写し切ったハネケの力量なんでしょう。魂を揺さぶられる、と言っても大げさではない、大変な映画です。 【すねこすり】さん [映画館(字幕)] 9点(2007-09-19 17:31:47) (良:2票) |
★67.《ネタバレ》 感無量。後味の悪い映画です。最後のシーンの歪んだ顔が凄まじい。途中まで普通の恋愛ドラマと思っていましたが、全然違いました。 【将】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-08-09 18:01:24) |
66.《ネタバレ》 母親の精神的完全管理の下、ピアニストとしてのみ生きて来た女はピアニストに必要なもの意外を受け入れる器を持たない。歳をとっても女として成熟していない。未熟な女が性欲を満たすために行う行動の一つ一つが男の性欲を満たすための行動となるのが面白い。つまり男は成熟しても性欲に対しては未熟なままということなのだ。なるほど、そうかもしれない。 異性への興味はあるものの、それを受け入れる器もないから認めたくもない。そこに突然表れる男。不器用を通り越した異常な愛の形。本当に縛られたいわけじゃない。本当に殴られたいわけじゃない。でも何をすべきか、何をしてほしくないのか、それさえも分からない。観ていて悲しすぎる。それでもハネケは手を緩めない。ラストであんな表情をさせるなんて、、、ハネケは鬼です。それにしても、これは小説ですね。ハネケは映画で小説を作ってます。 【R&A】さん [DVD(字幕)] 6点(2007-06-27 13:59:04) (良:1票) |
65.《ネタバレ》 いやー痛いお話ですな。女も男もエゴが剥き出し。互いに相手を支配できるって自信満々なところを挫かれて、そりゃしょうがないでしょうって感じ。 主人公は確かに極端ですけど、多分誰にでもある自信とコンプレックス、それがドワッとあふれ出てきちゃった醜悪な瞬間って誰もが恐れているものなのでしょう?それが見事に描かれている、確かにそうです。そのあたりがこの映画のミソなんでしょうが、でも「だから?」って聞かれても「ただそれだけ」としか言えない。その辺りが一度観れば十分ってところに落ち着いてしまう理由なのでしょうか。(格調高い芸術の世界の息苦しさや非常さ、それにもかかわらずそこしがみつきたい人々の喜怒哀楽の描き方なんかは好ましかったですが・・・) そんなドロドロ感が多い中で若い教え子の二人(コンサートで弾くはずだった彼女とレッスン中こてんぱんに貶されていた彼)の初々しさが対象的で印象深かったです。それも今のうちなんだろうね、って思うから余計まぶしかったのかもしれないけど・・・ 【ぞふぃ】さん [DVD(字幕)] 5点(2007-05-21 13:16:11) |
64.シリアスなだけに笑いを誘うこの展開、この痛さ、滑稽さ。こんな痛い映画は久しぶりでした。同じ人でも見る年齢や経験によって評価が変わってくるんじゃないでしょうか。これは性癖や変態思想のある人、性的コンプレックスが1ミリでもないとまともに取り合えない映画です。完全に健全な方は不向きです。どんなにエリカに嫌悪を感じながらも、心の深いところで僅かに共感できる自分がいます。エリカに、この映画にひとかけも共感できないという人とは心の底から仲良くできないだろうと思います。しかし結婚するのであれば、この映画にはまったく共感できない人がいいなと思いました。感想は聞いてみたいけど、人には勧めません。 【餅】さん [DVD(字幕)] 7点(2007-03-18 02:34:09) |
63.《ネタバレ》 原作イエリネクのドイツ語が難解で腹が立った大学の授業で見ました。授業で扱うような映画じゃないって。筆おろし狙いの美青年ピアニストと母親との確執で心に闇を抱える中年女ピアノ教師の複雑な絡み合い。 【Vanilla】さん [DVD(字幕)] 7点(2006-11-19 13:51:47) |
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62.《ネタバレ》 こんなに沢山の人が見た映画なのにビックリ・・・。見終わったときは「なんじゃ?」って思ったけど、時間が経つとわかってきたこともありました。お風呂場とか最後で自分自身を傷つけたのは「知性が欲望に勝る」ということがポリシーな彼女が欲望に負けた自分を罰してるんだと思いました。変態的な行為の欲求も家庭的とかまわりの環境が原因で実際には経験して学ぶということができず、画像とかバーチャルなモノで得た間違った知識しかない、無知な人の欲求なのでは?と思いました。主人公の無言の無表情の演技があまりにも上手すぎて、この映画にはもったいない。いずれにせよ最後まで救われない話は辛すぎます。 【さら】さん [DVD(字幕)] 4点(2006-05-18 15:47:05) |
61.《ネタバレ》 ・・・・痛い。説明はできないが、最後のエリカの顔が全てを語っているのでは。人は様々な局面で自分の人生を選び取るけど、それとは別にあがなえない宿命もある。母親との泥にまみれるような確執がある女性、または母性の裏の顔・その底知れぬ闇・全てを飲み込む恐怖というのを肌身で感じて生きてきた女性にはかなり痛い作品だと思う。キツイ。キツすぎます。もう見たくない。 【タマクロ】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-01-16 18:49:29) (良:1票) |
60.点数にすごーく悩む一作。もう一度観るか、と問われれば恐らくもう観ないであろうとは思う。ただ、この映画を観たことを忘れられるか、忘れるか、と問われれば、答えは明らかに「忘れない・忘れられない」である。他人に観ることを薦めるか、と問われれば、うーん・・・相手によりけり・・・恐らく薦めない。心も体もとっても痛い作品でした。 |
59.よくできた映画だけど、友人に勧められるかっていうと・・・。でもストイックな世界とそれによる歪み。現実と妄想の愛の違い。ちょっと引いちゃう性癖など・・・。テーマは盛りだくさん。感想文をかけといわれたらネタには困らないと思う。変態エリカに立ち向かって戦うワルターがスンゲー大人。さすが実生活が年増キラーだけあるぜ・・・。 【のりもちあつあつ】さん [DVD(字幕)] 7点(2005-09-04 18:33:29) |
58.ピアニストを目指す少年少女は大人になってから観て下さい。 【たま】さん [DVD(字幕)] 5点(2005-07-24 14:03:57) |
57.友人と借りてきてしまって、しまったっ…と思った。 【はげねずみ】さん [ビデオ(字幕)] 1点(2005-05-03 21:05:53) |
56.《ネタバレ》 ピアニスト教師である壮年女性は、自制の欠落と思う行動をとる。個室ビデオ屋で男の手淫した廃物を物色したり、車での淫行を覗きをして放尿するなどをし性の瞑想に耽けている。この衝動は厳格な環境に束縛され、世間体の整然された秩序への反逆と虚栄から生まれたのではないだろうか。深刻な風貌は厳然とし異性を遠隔させるものがある。そんな彼女にも稀有な変化が訪れる。ある日、美形の青年にがピアノを習いたいと彼女に近づいてきたのである。確執な好意であると彼女は感じるのであるが懐疑と不安は自虐的思想に狼狽とし事が上手く運ぶことができない。綻びに見せた稚拙を揣摩した青年は清浄であることを確信する。動揺の隠せない顔に彼は優しく敲くのである。彼は日を改めて彼女の家で逢いに行き。彼女へ渇望するのであるが彼女は手紙に綴られた方法でなければ嫌だと言うのである。しかし手紙の内容は清浄とは想えない卑俗な趣向であり二人を通底させるものではなかった。彼の顔には憐憫な情を湧かせ、部屋から出ていくのである。その後彼を暴徒させ最悪な終わりへ導く。手紙は彼女の嶮しい孤独の苦悶が曲行の快楽を示顕するものではないだろうか。一度千尋の谷に抛り出された精は執り成す事もできず彼に執拗に縋るしかないのである。しかし、叶わなけらばその鉾先は親身である母に向けられ、逡巡もなく渇望し苦渋するのである。『めぐり逢う時間たち』にも似たシーンがある。常に彼女が纏う孤独が茫洋な不安が恐るべき滲透性で精を侵食していくのである。意固地で無知な母には、それを許容応力できるものではない。体裁意識と矜持に活きた彼女にとっては極致のカタルシスといえるのではないだろうか。その夜、青年が以前とは別人の悪辣した形相で現れ、罵倒しながら彼女を強姦してしまうのである。孤独が生んだ迷妄の快楽は精を蹂躙するだけであり渾然の悲しみが彼女を覆う。次の日、恐怖から逃れるため昧爽な希望を抱き、彼に逢うのだが何食わない顔をして去って逝く。精は涙滂沱として流れ、憤慨に耐えられず自分の胸部に尖鋭を突き刺し終焉となる。天真爛漫に活きれば、これほど屈し甚すこともなかっただろうが虚栄の蔓延した世の中では、歪まず活きる方が難しいのではないだろうか。 【ぼん】さん [映画館(字幕)] 8点(2004-11-26 12:03:33) |
55.共依存という言葉を思い出しました。こんなかたちの家庭内暴力に目を向けていくべきなのかとも思いました。女生徒への細工は青年との嫉妬もあるんでしょうけど、母親が熱心、一見地味というかつての自分のような存在への同類嫌悪みたいなものもあったのか。ありがちな設定だ、AVかと思った、そもそもなんで先生を好きになったのかワケワカラン、など評価が分かれているようですが、目を離す事が出来ませんでした。 |
54.《ネタバレ》 地味で目立たない女主人公。化粧っけもなし。おしゃれもなし。恋人もなし。でもいいの!私にはピアノがあるから!突然現れた美少年。相手からの猛烈な好き好き攻撃。何この人!私のことからかってるの?やめて!男の人に期待して傷つくのはもう嫌なの・・・。どうして君は自分に素直になれないの?(かくかくしかじか)大丈夫。僕は君のことを傷つけたりしない。僕を信じて。・・・そんな少女漫画的な映画だと思っていた、ら・・・。(注意:上のレビューは少女漫画が好きな私の創作です)狼に育てられた少女がその後人間に保護されても生活に馴染めないのと同じようなものなのか。小さい頃からピアノ一色で、恋愛もせず友達もおらず(いなさそう)しかもあんな厳格なお母さんに育てられたらそりゃ歪むわ。モデルにする人間がいないんだもん。オチは、現実は少女漫画のようにはいかんって感じました。面白かったです。 【キュウリと蜂蜜】さん 9点(2004-10-09 11:56:24) (笑:1票) |
53.愛を識る事は難しいが愛を実践する事もまた難しいな、とつくづく思った作品。痛々しいのも度が過ぎると憐れに思える。残され自分を傷つけそしてピアノを捨てるエリカ。ラストシーンがとても衝撃的でした。本当になんか陰鬱な気持ちになった・・正気かよ!とマジメル張りに引きつつ気分的には0点だった。他人には薦めたくないし、手放しにこれイイとは言わないが考えさせられる映画であったとは思う。 【HIGEニズム】さん 7点(2004-09-07 05:32:52) |