1.《ネタバレ》 実生活でも日々、医療に対する疑問や不満というのは抱くもので、これはそこにメスを入れた映画として大変に意味ある作品だと思います。そしてちゃんと面白い映画で。堤真一が、ごくごく抑え目な演技をしてみせますが、そのクールさが魅力的なキャラになっていて。夏川結衣の表情もいつになくいいですし(この人は、コメディをやってこそと思っているのですが、このシリアスな映画でコミカルな面をきっちり見せてくれます)。ただ、柄本明と生瀬勝久の演技は大袈裟過ぎ。映画のトーンをブチ壊し。手術の失敗シーンでのあまりのわざとらしさなんか見てて恥ずかしいレベル。大体、絶対的な悪を設定して、それを駆逐してカタルシスを得るなんて展開だと極端な例になってしまって問題がボヤけてしまいます。質すべき医療の問題がどこにあるのか、脳死判定や生体肝移植、医師の資質から医師不足まであちこちと広げつつもきっちり娯楽性の高い映画になっていた点では評価できるのですが。でも、この映画の影の主役は手術シーンで臓器を作り上げた美術スタッフでしょう。手術シーンとなると、どうしてもグロテスクになってしまう訳で、それはこの映画も同じですが、臓器の「演技」で人を感動させるという離れ業は、美術スタッフ、特殊効果スタッフの努力の賜物としか言い様がありません。ジミめながら良質な社会派エンターテイメントでした。