1.ドイツによる、ドイツ映画としてのルートヴィヒです。これは、致し方のないことだと思うんですが、過去に“ヴィスコンティ版”という無視の出来ない作品がある以上、比較されるのは宿命で、本作は、それを意識し過ぎて、そこから離れようと頑張りすぎた感あり。全体にかなり薄味な作品となってしまいました。雰囲気も全体に明るいです。少なくとも、ヴィスコンティ版を覆い尽くしていた頽廃感はほとんどありません。ルートヴィヒを演じたザビン・タンブレアは確かに美しいのですが、アングルによってはオバサンみたいな顔になり、また、身長がものすごく高い上に顔が小さいため、単独のシーンは良いのですが、他の出演者との絡みになると浮いてしまうという・・・。王の衣装がもの凄く映えますけれども。また、シシー始め、ゾフィー、オットーと、役者に魅力が欠けています。途中、いきなり14年飛ぶので(その間にルートヴィヒの役者も変わってしまう)、そこが本作の一番の残念ポイントです。同じ尺に収めたかったのであれば、冒頭をカットし、戴冠式から始めてもゼンゼン良かったと思うのですが・・・。さらに、ワーグナーの描写もただの「わがままなオッサン」という感じでイマイチ。まあ、私はワーグナーが人としても作曲家としても、またその音楽も嫌いなんで、ヴィスコンティ版みたいに、とんでもない下品クソジジィ的な描写を期待してしまっていたのかも知れません。それにしても、ルートヴィヒは、生まれてくる時代を間違えたのだとつくづく思います。あの時代のヨーロッパで、平和と芸術を愛し、とか言っても、それは寝言にしか聞こえないのも無理ないですもんね、側近にしてみりゃ。私個人は、ルートヴィヒは決して“パラノイア”などではなく、国庫の破綻を真剣に憂慮した側近によって禁治産者とされたのだと信じているので、どうしても、ルートヴィヒには同情的になってしまいます。・・・しかし、ドイツの威信を掛けての制作、みたいな売りの本作でしたが、公開1か月足らずで終映の様です。劇場もガラガラ。あれこれ書いてきたけど、そんなに悪い作品ではないと思うのに、何となく寂しいですねぇ。DVD化もビミョーな感じかな。