13.《ネタバレ》 最悪の結果を招いたのは対立だけでなく、北アイルランドのデモ隊とイギリス軍、各々の連携が取れてなかったのだろう。エネルギーの余った若者たちが暴徒化しなければ、本部の指揮と現場の意思疎通が取れていれば、その歯車の噛み合わなさによる悪い偶然が取り返しのつかない事件に発展していく。煽情的に盛り上げることを避け、極めて淡々と描いているが、最後まで飽きさせない構成力。ただの再現ドラマとして細部まで描くのではなく(というよりできない)、その日その日の即興的な演出がむしろ現場を目撃したような迫真さを生み出すことに成功している。世界が事件に関心を持ってもらう意味では、グリーングラス監督の意図は正しい。エンドロールの"Sunday Bloody Sunday"が痛切に響く。 |
12.《ネタバレ》 映画としての評価がとても難しい作品です。 文献・資料としての映像作品と見るならば、その価値は極めて高いと思われます。 一応調べてみたのですが、この事件は本当にあったようですね。 映画というよりはドキュメンタリーに近い作風。もちろん、実話をもとにフィクションで構成されているわけですが、まったくのフィクションではなくノンフィクションの側面も持ち合わせている作品です。起こった出来事をおそらく忠実に再現し、それを淡々と流しているだけなのですが、言いようのない緊迫感が充満しています。 解説では、『イギリス、アイルランド、どちらが見ても納得できるように作った。』とありますが、この内容ではとてもイギリス側は納得しないでしょう。完全にイギリス側が非人道的な行為を行い、それを国ぐるみで隠蔽したように描いているのは明らかです。 もちろん、先にコースをはずれ、投石という暴力行為に出たアイルランドの若者達にも非はありますが、それに対する報復措置としては罰が重過ぎます。また、逃げ惑う人、撃たれた人を助けようとしている人まで狙撃されています。完全にイギリスという国家、その国が抱える軍隊を糾弾する内容に仕上がっています。 個人的には、この作品の作成の中心にイギリス人がいることが最早凄いです。 アイルランドの人はこの事件を忘れることはないが、イギリスではこの事件はほとんど語られないという事実が、この事件の全てかもしれません。 【たきたて】さん [DVD(字幕)] 7点(2016-02-18 00:32:24) |
11.《ネタバレ》 ■淡々と、しかしきちんと事件までに道のりをデモ隊・軍両方の立場から描いていく。偶然が絡み合い、悲劇が起こる。手ぶれカメラが臨場感を高め、実際に虐殺の現場にいるような感覚を引き起こす。 ■ただ、後日談で軍のことしか書いていなかったが、IRA側があの後どういう行動に出たのかはテロップでいいから流してほしかったなぁ。公平を期すという意味でも。 ■あと、この映画で流された「真実」が、どういう人の情報に基づいて作られているのかも気になった。おそらく(本篇にあった通りで)イギリス軍の公式発表とは異なるものなのだろうが、これが歴史家の定説ならいいけど、実際のところ何が起きたのかがわからない状況だったらこれを安易に信ずるのは、イギリス軍の発表を安易に信ずるのと同様に危ないのかもなぁ、と思ったり。 【θ】さん [DVD(字幕)] 5点(2010-02-23 23:40:45) |
10.《ネタバレ》 「どちら側からも認められる作品を目指した」という監督の意図もあって、イギリス側(≒プロテスタント)からも北アイルランド側(≒カトリック)からも見ることができる。映画の持つ歴史的な価値は高いと思う。双方を切り替えるタイミングや見せ方がうまく、ドラマとしても見ごたえがあった。メイキングを見ていると、この監督の腕のよさがわかる。見せ場での、伝える力を持っている監督だなと感じた。 非武装の市民を撃つシーンは、現場の重苦しさ、リアルさが出ていて、感情を揺さぶられる。ひでえ、なんてことを…と自分もその場にいるような気持ちで思わずにはいられない。IRAの報復したくなる気持ちもよくわかった。 国の都合からすると、市民の命よりも、体制の方が大事なのかもしれない。虐殺した軍の指揮官に勲章ですか…。大きくあれ、小さくあれ、似たようなことが今も世界のどこかで繰り返されているような気もする。人間ってやつは…。双方がうまくかみ合いさえすればこのような悲劇は起こらなかっただろうに…。すべての悲劇は、何かが少しずつかみ合わなくて起こるものなのかもしれない。 【MARTEL1906】さん [DVD(字幕)] 9点(2009-11-29 08:25:24) (良:1票) |
9.テレビの世界で社会派ドキュメンタリーでならしたポール・グリーングラスの集大成でありハリウッドへの布石となる渾身の作。この作品の手ブレは臨場感を出すための手段として意識的に使われている。それは単に事件をそのまま再現したいというだけで使われた手段なのかもしれないが、もしこの作品が事件をそのまま再現したものに過ぎないのならば映画としての価値を見出すことはなかっただろう。でもこの作品は単なる「再現」を超えていると思う。それはブレどころを押さえているからだと思う。ブレないカメラが行進する市民、敵対心を露にする若者、英軍のそれぞれの立場のそれぞれの行為をわかりやすく映し出す。冷静で冷酷で、なおかつ結束力のあるところを一瞬で解からせるIRAメンバーの描写もいい。そこに暴動の激しさを表すブレる映像がここぞとばかりに挿入されるから効果も絶大である。主人公とまではいかないがそれに近い存在の青年がいるのだが、この青年の行動にもっと添ったかたちの作品にしてくれれば、個人的にはより良かったように思う。エンディングテーマでさらにそう思った。U2の「ブラディ・サンデー」はかっこよくて好きなのだが、この作品とは合わない。映画よりも存在感がある。おそらく音楽がかもす虚構性が映画よりも強いのだ。真実っぽく語るよりも虚構に富んだほうが胸に染み本質に迫れるといういい例だと思った。だからこそ一人の虚構の主人公を物語の軸にしてほしかった。 【R&A】さん [DVD(字幕)] 6点(2008-10-01 14:14:47) (良:1票) |
8.《ネタバレ》 現場の臨場感を出すために照明は使用せず、カメラは手持ち。分かってはいるんだけど、やはり見難い。あの手ぶれは見ていて疲れる。しかし、軍が虐殺し、司法がお墨付きを与え、女王が勲章を授与する…。まさに国家ぐるみだな、こりゃ。ある意味、解り易い。胸に警官や兵士のバッジを付けてるだけで、テロリストと同じ事しても罪に問われないなんて、これが「民主主義の母国」の真実の姿か?今月になってようやく自治政府が4年半ぶりに復活したそうだけど、どうなりますかねえ 【鳥居甲斐守】さん [DVD(字幕)] 7点(2007-05-21 20:40:49) (良:1票) |
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7.《ネタバレ》 「ユナイテッド93」が面白かったのでこちらも見てみたんですが、次々と切り替わる場面転換と、揺れ揺れの手持ちカメラの様な映像スタイルはこの時から確立されていたんですね。「血の日曜日」という事件は知っていましたが、正直ここまで酷い事件だとは思いませんでした。でも、軍が死んだ少年の胸ポケットにクギ爆弾を仕込むとか本当にやったんですかね?(まぁやりそうだけど)とにかく良い歴史の勉強にはなりました。 【Junker】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-02-24 01:59:02) |
★6.何の気なしに借りてみたDVDで、グッときた…「血の日曜日」と言う事件のことは聞いたことがあるけれど、ああいう話だったのかと身につまされた。鉛色の空と荒涼とした風景が悲劇と相俟って重苦しさ作り出し、ゆれる画面とマイナーキャストでリアリティ倍増。戦争は全てを不幸にする。 【芝居好き!】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-02-06 21:21:21) |
5.《ネタバレ》 最後にU2の「Sunday Bloody Sunday」が流れます。これまで大好きで何百回と聴いてきた曲ですが、改めてこの曲にこもっている思いが深く胸に突き刺さってきました。 内容は、非常に衝撃的でした。「血の日曜日事件」の凄惨な様子がドキュメンタリータッチで生々しく描かれています。(「ユナイテッド93」と同じ監督の作品なんですね。) しかし、見ていて英国軍に対する怒りが湧き上がってきましたね(勿論、英国軍も被害は相当受けているし一方的に悪だとは思いませんが・・・・)。全く関係の無い私がそう思う位ですから、アイルランドの人たちにしてみたら・・・・・。そう考えると憎しみの連鎖というのは中々簡単に断ち切ることができないなと改めて痛感します。だからこそ、「We Shall Overcome Someday!」という言葉が心に響くのかもしれません。 【TM】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-11-06 18:18:39) (良:1票) |
4.大して有名な映画でもないし、ポール・グリーングラスという人もさして有名監督ではないのであまり期待せずに見たのですが、ほとんどの日本人が知らないうちにこんなすごい映画が作られていたことに驚きました。1972年に起きた実話をきわめてマジメに再現する作品で、映画的な脚色やドラマティックな演出はことごとく排除され、音楽すら使わないという徹底ぶりなのですが、だからと言ってこの手の映画にありがちな企画倒れや製作者の自己満足に終わることなく、映画として十分におもしろく作られているのがすごいところ。この映画はもはや「ドキュメンタリータッチ」という生易しいものではなく、1972年1月30日という日を丸ごと再現することに挑み、成功しています。あたかもその日その場にカメラが居合わせたかのような映像やセリフが続いて空気感まで再現してみせ、観客もその場にいたかのような臨場感を味わわせてみせます。ドラマ的な脚色は廃されているため前半の話は淡々と進むものの、無作為なように見えて実は巧みに話をまとめていくので退屈さは感じさせず、見る側のテンションを落とさないまま「血の日曜日事件」へと突入していきます。「血の日曜日」での監督の手腕は本当に圧倒的で、平和的に行われるはずだったデモが徐々に混乱していき、やがて丸腰の市民への発砲へ至っていくまでの様子をデモ隊、イギリス軍の双方の視点を巧みに交えながら、きわめて的確に描いていきます。また画面作りもしっかりしていて、実際のデモの中にカメラがいたとしか思えないほどリアルな映像であの事件を観客にも追体験させる一方で、同時に映画的な見せ場としての機能も十分果たしており、不謹慎ながら見ている側を興奮させるのです。このポール・グリーングラスという監督はタダモノではありません。画面作りに並ではない才能を見せると同時に、インテリジェントな題材の脚本を自ら書き、もっとも適切な手法で見せてくるのですから。ウィリアム・フリードキンが今の世代の監督なら、多分こんな風になっただろうなと思わせるようなすごい監督です。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-10-24 22:32:18) (良:1票) |
【Miranda】さん [ビデオ(字幕)] 5点(2006-03-05 23:49:43) |
2.When they shot the people there. The cries of 13 marty martyrs. Filled the Free Derry air. Is there any one among you. Dare to blame it on the kids? Not a soldier boy was bleeding. When they nailed the coffin lidds. 【永遠】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-10-20 07:00:03) |
1.1972年にアイルランド、デリーで起こったイギリス軍によるアイルランド市民虐殺「血の日曜日」を映画化した作品です。物語は冒頭から事件に至るまでの様子を、イギリス軍とアイルランド市民との視点から交互に描いていくので、最後まで全く緊迫感が途切れません。「血の日曜日」という名前だけは聞いたことがあったけど、実際にどんな事件かは知らなかったので今更ながらに衝撃を受けました。何ともやるせない、深い悲しみに包まれた作品です…。ところで監督のポール・グリーングラスは後に撮る「ボーン・スプレマシー」を観た時にやたらと画面のブレが気になったけど、この時から既にブレまくっています。 【かんたーた】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-09-27 23:38:49) |