9.《ネタバレ》 見ているようで実は"見ていない"。
日々の物事が習慣化すれば、ただの形式として軽く済まされる。
時が経てば経つほど少しずつ消えていく言葉は時間の流れによる現実の風化と重なり、
抗うように世界を見ていく、その瞬間の言葉たちを拾い上げて詩として遺していく。
示談で事件を闇に葬ろうとする加害者の父親たちを他所に、
ミジャは善悪の揺らぎの中、事件に関わった人たちのために何ができるかで惑う。
自分自身が消えていく中で、次第に孫への気持ちは離れていき、亡くなった少女と同化していく。
静かに綴られていく醜さあふれる世界故に、詩の美しさが輝きを放つ。
ミジャは風化させてはならない現実を、少女が存在していたことを詩に込め、贖罪として姿を消した。
橋から身を投げようとする少女の、観客に突き刺すような眼差しが忘れられない。