1.ネット上の仮想世界が、現実世界のライフラインをも司るようになったごく近い未来社会。
そんな中、田舎の“おばあちゃんち”に集まった家族一同が、結束して世界を救う。という話。
“バーチャルリアリティ”の世界と、旧家の“おばあちゃんち”という相反する「場面」の融合。
このユニークな題材を、「時をかける少女」の細田守×マッドハウスがどうアニメーションとして描き出すのか。
それは興味深さと同時に、大いなる疑問符を持たざるを得なかった。
が、その疑問符は、圧倒的に高い「創造物」としてのクオリティーの前に、早々に一蹴される。
作り込まれた仮想世界のディープさと、“おばあちゃんち”という普遍的な日本の様式を見事に共存させ、映画に引き込まれるにつれ、この上のない“居心地の良さ”に包み込まれる。
ストーリー自体ももちろん面白かったのだが、マトリックス的に入り組んだ世界観を、決して小難しく表現するのではなく、日本独特の居心地の良さの中で極めて身近な感覚で表現できたことが、この映画のこの上ない価値だと思う。
仮想世界の中でのアバター同士の“つながり”を、現実世界の家族同士の”つながり”、そして世界全体の人間同士の“つながり”にまで昇華していく。
その様は、ネット上でしか繋がりを持てないでいる現代人、すべてを“数字”で処理してしまう現代社会に対する警鐘であり、同時に“救い”のように思えた。
そういうことを、難解なフレーズを並び立てて描き出すのではなく、主人公の少年をはじめ、一人の人間の心の成長の中で瑞々しく描き出す映画世界に、泣けた。
梅雨明け初日、夏のはじまりの日に見る映画として、実にふさわしい。実にスバラシイ映画だ。