1.《ネタバレ》 観応え有り。
但し、「RUSH プライドと友情」や「フォードvsフェラーリ」の様なスポーツ系のノリを期待して観ると肩透かしを食らう事必至。
往年のフェラーリのレーシングマシン達の雄姿(どうやって撮影したのか? 本物?CG?レプリカ?)は堪能出来るが、
映画の大半はタイトル通りエンッオ"コメンダトーレ"フェラーリの人となりと、彼を取り巻く二人の女性の描写に終始。
本作では敢えて彼の一生涯の中でもごく一部の期間だけを取り上げているので、間延びする事も無く濃密な雰囲気を感じる事が出来る。
それにしても、このフェラーリと言う男は一般常識的にはとんでもない駄目男である。
会社を一緒に起こした正妻との中は冷え切り、愛人とその息子には人間性の有る一面を見せる一方、正妻と刹那的な情事に及んだりもすると言う、とにかく得体の知れない訳の判らない男。
もっとも、ある意味「不完全」な男だったからこそ、世界に名だたる超高級スポーツカーマニュファクチュアラーを興す事が出来たのかもとも思う。
自社の創業者の「恥部」をこうして伝記映画の形を借りて映像化する事を、よく残された人たちが許可したものだ。
現フェラーリ社副会長のピエロ・フェラーリは、正妻が亡くなる事で会長職に就いた。
それまで永年の間、それこそ本作で描かれていた時期から相当な期間、彼とその母(フェラーリの愛人)は辛い立場に居たと思われる。
本作がピエロ氏からエンツォ氏への一風変わった復讐の一つと受け取るのは邪推が過ぎるか。
最後に、正妻を演じたペネロペ・クルスは物凄く良い演技をしていた。