13.《ネタバレ》 かなり以前から見たいと思っていたが、DVD等が出ておらず、なかなか見る機会に恵まれなかった映画の一つなのでようやく見れたことがまず嬉しい。幕末の「人斬り以蔵」として有名な岡田以蔵を主人公に、彼と武市半平太や、坂本竜馬、田中新兵衛らの関係を描いているが、橋本忍の脚本はやはりしっかりとしていて、武市の命令で次々に暗殺を遂行した以蔵が、結局は使い捨てにされてしまうという悲劇性がよく描かれていて見ごたえがある映画で、素直に面白かった。(見たいと思いながらも五社英雄監督ということで不安にも思っていたが、今まで見た五社監督の映画の中ではいちばん面白い映画だと思う。)勝新主演映画を見るのが久しぶりなのだが、演じる以蔵は豪快な存在感があり、座頭市とはまた違う勝新の魅力を感じることができる。仕事に参加させてもらえなかった以蔵が一日かけて長距離を走るシーンは映像的にとても美しく、異様な迫力があり、印象に残るし、勝新は「薄桜記」の冒頭とかでも走っているが、どこか「決闘高田馬場」のバンツマをほうふつとさせるものがある。武市役の仲代達矢はギラギラした存在感で、武市のこれでもかというような非情さをうまく演じていて、メインキャストの役では久しぶりに見る気がするのだが、あらためて名優だと感じた。この二人に対して竜馬を演じる裕次郎は勝新との共演がみどころとなるが、やはりというかなんというか違和感があり、裕次郎には時代劇は似合わないなあと思う。そして忘れてはいけない三島由紀夫演じる田中新兵衛。三島由紀夫を俳優として見るのは「からっ風野郎」以来、二度目なのだが、本作でも演技はかたい。しかし、独特の存在感とオーラを放っていて、その演技のかたさも新兵衛に不思議とマッチしているし、なかなか味があり、良かった。本業が俳優ではないながら、この役は三島由紀夫の俳優としての代表作になるのではないだろうか。本作は三島事件の一年数か月前に公開されているが、濡れ衣を着せられた新兵衛が切腹するシーンはその後の三島由紀夫の運命を予言しているかのようで驚かされた。 【イニシャルK】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2016-08-15 18:38:52) |
12.遠い昔に名画座で見て「これぞ傑作」と思った覚えはあるのですが、結末をすっかり忘れていました。印象に残っていたのは、巨大な瓦屋根の前の道を行き来する勝新太郎と、ゾッとするような悪役ぶりの仲代達矢のみ。 そこで過日、BSで再見したわけですが、やっぱり傑作でした。勝新と仲代もさることながら、三島由紀夫が意外にいい感じ。しかしあのいかにもインテリ風の新兵衛が、おそらく命の次に大事にしているであろう刀をあっさり盗まれるようなマヌケには、どうしても見えません。脚本では強引にボヤかしてしましたが、ここだけ残念な感じです。 石原ポッチャリ龍馬も、ポッチャリを除いてはいい感じ。作品における唯一の良心、という描き方でした。 肝心の結末ですが、けっこうあっさりだったんですね。すっかり忘れていた理由が、ようやくわかりました。 さて遠い昔の若かりし頃に見たとき、「以蔵のような人生は送りたくないな」とつくづく思ったものです。そして今、私は幸いにして以蔵にはなっていないと思いますが、半平太でもない。新兵衛でももちろん龍馬でもない。せいぜい、倍賞美津子に呼び止められつつ振り払って去る名もなき通行人といったところでしょうか。そう考えると、いささか寂しいものがあります。 【眉山】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2016-06-26 03:04:32) |
11.司馬遼太郎の「人斬り以蔵」に基づくとは言っても、あくまで「参考文献」としてクレジットされており、確かに基となっている短編小説に対して、エピソードが大きく膨らまされております。岡田以蔵と田中新兵衛との関係など、なかなか巧みな描かれ方でして、この田中新兵衛を三島由紀夫が演じているというのが、見てて多少疲れるところではあるのですが(改めて、プロの役者って凄いんだなあ、と思っちゃう)、演技のぎこちなさが、ちょっとした不気味さにもつながっていて、同じ「人斬り著名人」でありながら、以蔵を演じる勝新の人間臭さと好対照になっております。さらに、切腹を演じた本人が後に実生活でも切腹しちゃったってのが、何だか因縁めいてもいるのですが。 その人間臭い以蔵も、冒頭の吉田東洋殺害場面では相当に変態的。土砂降りの雨音が執拗に続く中、これまた執拗に人が殺されていく場面が描かれて、それを見ながら以蔵の顔は恍惚としていく。アブナイアブナイ。 という訳で、刀を振り回すシーン、人を斬るシーン、ノリノリでイッちゃってて、迫力あります。一方、粗暴なれどあくまで人間臭い以蔵に対し、幕末という時代の方がさらにイッちゃってて、結局はその運命に振り回される。坂本竜馬が石原裕次郎で、いかにも都会人っぽいのがどうなのよ、という気もする一方で、この狂ったような時代における一服の清涼剤のような存在にもなってたりします。 走る勝新、斬る勝新、彼の躍動感が、作品の魅力です。 【鱗歌】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2016-04-17 10:30:13) |
10.《ネタバレ》 キャストや、スタッフを見て、結構凄いなと思いながら観ました。結構、皆さん固定イメージがある役者が多いので、引きずるかとおもえば、意外と切り換えが出来ましたし、五社監督や勝新でも、結構しまった感じで楽しめました。そうそう、三島由紀夫の先祖と本物の田中新兵衛と大縁があるとは後で知ってびっくりです。 【min】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2013-07-14 22:52:41) |
9.《ネタバレ》 異色豪華キャストで、脚本に橋本忍。 つまらないわけがない! 以蔵は野性的ながら、一方で繊細な面を持っている憎めないヤツ。 ただ少しだけ頭が足らない。 頭が足らないから、偉い奴らにいいように使われ捨てられてしまう。 これは現代社会のサラリーマンみたいなもんだ。 ブラック企業に勤めているサラリーマンがまるで以蔵のようだ。 そういう意味で、ラスト、飼い主に報復するという顛末は胸のすく思いだが、以蔵自らの命をもって報復するというのは、どうにも切ない。 もっと良い解決方法はなかったんだろうか、と思う。 映画としての完成度も高いし、キャストも良い。 なかなか良い掘り出し物を見つけた気分だ。 【にじばぶ】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2013-01-23 12:05:15) |
8.《ネタバレ》 岡田以蔵を主人公に、武市半平太、坂本龍馬との三角関係を描いた作品。この3名の話は幕末ものによく登場しますが、私が観たものは、以蔵をナイーブで線が細い人物とした作品が多かった。本作では勝新が豪胆に演じていて新鮮でした。でも、使い捨ての道具のように扱われるあたりはしっかりと演出されています。勝新の演技力にも改めて感心しました。裕次郎とのツーショットは過去に見た記憶が無いので、貴重なのかも知れません。 でも、本作の一番の収穫は初めて見る俳優・三島由紀夫でした。異様な迫力。違和感とも言える存在感です。役者専業で無いことが良い方向へ働いていると思います。薩摩の人斬り・田中新兵衛を演じ、最後は自刃します。嫌でも彼の実際の人生の最期が被ります。彼が切腹したのはこの作品の公開から約1年後。その時、彼の脳裏にはこの映画のロケがよぎったのかも知れません。 私は五社監督を昭和後期の邦画をダメにした張本人と思っていますが、本作は様式への過剰な拘りも見られず楽しめました。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-01-07 01:03:21) |
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7.《ネタバレ》 勝新太郎の演技、表情は申し分ない。しかし、メタボな体型が最後まで以蔵のキャラにしっくりこないという違和感が拭いきれなかった。 特に走るシーンは滑稽ささえ感じてしまった。 この映画の中で出てきた人物で勝新太郎の体型、迫力を活かせるイメージの人物はほとんど居なかったのではないだろうか。 勝プロダクション制作ということで主演にするしかないとすれば、この物語は選択ミス。 折角のいい演技がもったいない。 幕末を描きたかったのであれば、西郷隆盛あたりをチョイスべきだった。 その他の配役も演技は申し分ないんだが、年齢層を高く設定し過ぎ。 幕末の志士たちは、もっと若々しく、荒々しかったはずである。 展開、画面構成は監督、スタッフともいい仕事をしているだけに、違う配役で、もっと若さを全面に出した脚本、演技にして欲しかったと思う。 【nobo7】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2013-01-02 03:10:57) |
6.《ネタバレ》 おもしろかった。テレビ主導という大衆化と引き締まった一世代前の時代劇がうまく重なった印象。やや時間が長く疲労感あったものの心地良い緊張感だった。三島演ずる田中新兵衛のキャラは泣ける。ただ。裕次郎・勝の演技はブレがなく楽しめるものの首の下の肉が気になってしょうがない。アレが無ければなぁ。 【reitengo】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-12-25 20:46:48) |
5.《ネタバレ》 創作もかなり入ってるみたいだけど、飼い犬の苦しみを勝新太郎が見事に演じ、重厚な作品へと導いている。出演者は他に石原裕次郎、仲代達矢、倍賞美津子など。そして驚いたのが三島由紀夫。この人、俳優もやってたのね。それほど「上手い」って感じではないけど、独特のオーラがあってイイ。鍛え上げられた肉体も凄いし…。そんな豪華キャストに加え、こだわりの映像にも惹かれる。挙げればキリが無いが、例えばのけ者にされた以蔵が全力疾走で石部宿に向かう場面はとても美しく、ダイナミック。殺陣にしてもパワーを感じる本格的時代劇だ。 【リーム555】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2012-12-19 22:02:16) |
4.勝新の演技力・パワーに感動しました。自分が若いころは決して好きな役者とは言えなかったのですが、最近はその魅力がやっと分かってきました。仲代達矢の武市は史実に忠実にその冷酷さを表現していました。三島の石部宿襲撃の際の殺陣も素晴らしかった。あの頭をすっぽり覆った頭巾(?)は耳への斬撃を避けるためでしょうか? 【源八】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2012-12-19 10:03:45) |
★3.昔、名画座で鑑賞しました。殺陣がとにかくすばらしいです。五社英雄監督の様式美が映像の随所に感じられます。この映画の一年後に、三島由紀夫が割腹自殺を遂げると誰が予想し得たでしょうか。幕末物が好きな人、三島文学の好きな人には是非見て欲しい傑作です。 【ジャッカルの目】さん [映画館(邦画)] 9点(2006-12-29 13:28:27) |
2.《ネタバレ》 最近の時代劇しか知らない自分にとっては衝撃的な作品でした。内容はともかく主演の方の荒々しくて力強い剣さばきは実に見事でした。圧倒的な迫力を感じます。まさに岡田以蔵といった感じではないでしょうか。それだけで見る価値があると思います。全体的に血なまぐさい感じがしますが幕末の主に京都の話ですしタイトルが「人斬り」ということで当然でしょうね。今ではこういった作品を作るのはおそらく無理しょうね。それだけの俳優もいないでしょうし。突っ込みどころといえば史実と違うところがいくつかあるところ。龍馬が違和感あるところでしょうかね。 【青陽】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2006-12-27 01:33:20) |
1.《ネタバレ》 幕末四大人斬りの一人、岡田以蔵のお話。ストーリーも面白かったけどやっぱりキャストが凄い。以蔵に勝新、武市に仲代、龍馬に裕次郎(!)、他三島由紀夫・倍賞美津子といったこの時期ならではの各社スターが出演。みんなそれぞれ好演だけど裕次郎だけはずっと西郷みたいだったw あとは砂埃を巻き上げながら走る勝新が阪妻みたいで面白かった。 【バカ王子】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2006-04-10 23:39:37) |