15.《ネタバレ》 ジョン・フォード作品はほとんど観ていないが、彼が只者ではないことは本作を見れば分かる。
ドキュメンタリーといってもいいほどのリアリティを帯びており、大恐慌時代のアメリカの混乱した状況が窺われる。
こういう辛い時代を経て、今のアメリカは成り立っていることを知ることができるのも非常に勉強になる。
特別なイベントがなくても、じいさんとばあさんが死んでしまう展開には驚かされた。
それだけ、このアメリカ横断の旅が過酷を極めたということが分かる仕組みとなっている。
大きなドラマは描かれおらず、各キャラクターの内面をクローズアップしているわけでもないが、様々な感情が伝わってくる良作だ。
いつぶっ壊れて止まるか分からないトラックを走らせるだけでも、絶望的な悲鳴、救いを求めるような叫びが聞こえてくる。
あのトラックが非常にいい味を発揮している。
壊れかけのトラック自体、民衆や家族を言い表しているのかもしれないと感じられた。
壊れそうで壊れないトラックは、倒れそうで倒れない民衆、バラバラになりそうでならない家族の絆そのものかもしれない。
10点を付けたいところだが、本作の良さを完全に理解するには、自分の経験や知識がまだ浅いのかもしれない。
また、個人的に少々気になったのは、ラスト付近の描き方だ。
母とジョードの関係を通して家族の絆を描き、母親・女性の強さを強調するラストシーンには文句をつけようもないが、終盤はやや忙しすぎたり、ジョードの変化などは唐突なイメージも感じた。
ドラマはきちんと盛り込まれているが、どこか中途半端な部分もあるのではないか。
きちんと描きこむか、ほとんど描かないかのどちらかになると思うが、ドキュメンタリータッチであることを踏まえると、難しい判断だが、本作よりもむしろ描かないという方向性ても言いたいことはちゃんと伝わったのかなとも思われる。
勉強をしていないので、あまり難しいことは分からないが、本作は資本主義を否定し、社会主義的な思想が強いのも特徴だろうか。
赤狩りが本格化するのは1950年前後であり、1940年においてはアメリカにおいても社会主義を肯定するような意見があったのかもしれないと窺われる。
そういう時代背景を想像できるというのも面白い。