92.《ネタバレ》 記念すべき500本目のレビューだから、明るく楽しい気分になれる映画が良いなと思い、本作をチョイス。
良く考えたら作中で死者も出ているし、何もかも全てハッピーエンドって訳ではない品なのですが……
久々の鑑賞後には(やっぱり、これを選んで良かった)と、しみじみ感じる事が出来ましたね。
そのくらい、終盤の逆転劇が痛快。
「被告人の無罪を証明する」という、裁判物ならではのカタルシスを、存分に味わう事が出来ました。
「ツナ缶の万引き」「アメリカ南部への偏見」などの要素によって、無実のはずの若者二人が殺人容疑を掛けられてしまう流れを、丁寧に描いている点も良いですね。
(そりゃあ犯人と誤解されるよ)(嫌な印象を持たれて当然だよ)って感じで説得力があるし、それでいて若者二人を嫌いにはなれないという、そのバランスが絶妙だったと思います。
他にも「ヒロインのリサは車に詳しい」「ビニーは裁判に不慣れなだけで、本当は賢い」という伏線が、序盤から張られている事にも感心しちゃうしで、作りが丁寧なんですよね。
裁判で無罪を証明する事が、そのまま真犯人の逮捕に繋がる形になってる点も、とても好み。
裁判物では「無罪は証明出来たけど、真犯人は不明のまま」ってオチの品もあったりして、モヤモヤさせられた経験があるだけに、本作は後味スッキリで気持ち良かったです。
食堂のメニューが「朝食」「昼食」「夕食」の三つしかない、という場面なんかも、妙に好きですね。
こういうさり気ないユーモアって、御洒落だなって思えます。
それと、自分が一番お気に入りなのは、煉瓦とトランプの喩え話の件。
ここって「ビニーは頭の良い人間である」と示すだけでなく「ビニーは本当に、ビルの無実を信じてる」事を描いた場面でもあるんですよね。
「お前は、無実なんだから」という一言が、凄く恰好良い。
作中において、一瞬たりとも「ビルが犯人かも知れない」と疑う場面が無い事も含め、この「被告の無実を心から信じてる弁護士」という描き方は、本当に良かったです。
弁護士にとって一番大切な事は、何よりもそこなんじゃないかと思えました。
そんな本作の難点を挙げるとすれば……
最後の最後、マロイ判事に助けてもらう形になったのは恰好悪かったとか、精々そのくらいかな?
いずれにせよ、数ある裁判映画の中でも、特にお気に入りと呼べそうな一本ですね。
何時か、1000本目のレビューを書く時が訪れた際には、この映画に負けないくらいの傑作をチョイスしたいものです。