10.《ネタバレ》 重くなりがちなテーマを、比較的軽めのコメディタッチに仕上げており、しかも軽い仕上げであっても、きちんと感動できるようになっている。
監督・俳優の高い技量の賜物だろう。
現実離れしたご都合主義という批判はあるかもしれないが、何もかも現実に即して描く必要はなく、ちょうどいい上手い具合に調理された映画だ。
いい年をしたオヤジたち二人の旅は本当に微笑ましい。
見ているこちらも、旅に出掛けたくなる映画だ。
旅に出掛けることももちろん意義があることだが、モーガン・フリーマンにとっては意識を改革することに意義を見出そうとしたのだろう。
病床で家族と向き合う期間をだらだらと過ごすことよりも、忘れてしまった妻への想いを取り返し、一瞬だけだとしても家族とかけがえのない時間を過ごすことによって、自分の人生に再び輝きを取り戻すことができると考えたのではないか。
妻への説得があっても帰ろうとせずに、ジャック・ニコルソンの色仕掛けのワナによって、ようやく妻への忘れかけた想いを再び感じられるようになるというのも面白い仕掛けだ。
ニコルソンにとっては、この旅は単なる道楽だったかもしれないが、旅を通して、かけがえのない親友を手に入れている。
女性にはモテるかもしれないが、本当の意味で親友と呼べる存在はモーガン・フリーマンだけなのだろう。
秘書とも深い絆で結ばれているが、対等の立場ではないので、親友とは呼べない。
親友だからこそ、誰もが言わないことを言ってやろうと思う(疎遠となった娘と会え)。
親友だからこそ、自分にとって難しいことを言われたとしても、それに応えてやろうと思う。
親友というのは、そういう関係なのだろう。
自分流の“最高の人生”とは、「自分の人生をできるだけ楽しむこと」だと思い、そういう生き方を今まで実践してきたが、それでは半分程度なのかもしれない。
自分の人生を楽しむことだけではなく、他人の人生を楽しませてこそ、本当の意味において“最高の人生”ということになるのだろう。
本作は、結構深いところを描いている。
妻(恋人)、家族はもちろんのこと、友人でも構わないという点がなかなか良い。
彼らは6ヶ月程度でそれを成し遂げたのだから、誰にとっても遅いということはない。
そして、誰でもそれはできるはずだというメッセージを込めたのではないか。