1.《ネタバレ》 「ホリデーロード4000キロ」から続く、Vacationシリーズの五作目である本作品。
(二作目は「ヨーロピアン・バケーション」
三作目は「クリスマス・バケーション」
四作目が「ベガス・バケーション」)
けれど、自分のように上記作品群を未見の人間であっても、充分に楽しめる内容となっています。
何せ作中にて「前回の旅っていうのを知らないけど……」「構わないさ。今回は、別の良い旅になる」という会話が挟まれているくらいですからね。
作り手としても、意図的に「シリーズ未見の人でも大丈夫」というメッセージを送っているものかと思われます。
豪華な出演陣に、シニカルな笑い。
グランドキャニオンをはじめとする道中の景色など、様々な魅力に溢れた映画なのですが、やはり主人公であるオズワルド一家の存在感が大きかったですね。
ラスティは、一見すると頼りなくてドジなダメ親父。
けれど、父譲りの「絶対に諦めない」という長所と、何よりも家族を想う優しさを備えた人物なのだから、自然と応援したい気持ちになってきます。
そして、少々生活に疲れ気味ながらも、充分に美人で魅力的な奥さん。
ナイーブな性格の兄と、やんちゃな弟である息子二人も可愛らしくて、観賞後には、この家族が大好きになっていました。
中には少々下品なギャグもあったりするのですが
「不快な映像は、極力見せない」
というバランス感覚が巧みであり、作品全体に何処となく御洒落なセンスすら漂っているのだから、本当に嬉しい限り。
個人的に好きなのは、幼い息子から
「小児性愛者って何?」
「トイレの壁に穴が開いていたけど、あれ何?」
などと質問された際に、ラスティが丁寧に教えてあげようとして、妻に止められるという一連のやり取りですね。
劇中で死亡したかと思われたリバーガイドさんが、実は生きている事がエンドロールで判明する流れなども「観客に後味の悪さを与えない」という配慮が窺えて、とても良かったです。
自分一人の時なら列に横入りされても我慢してみせたラスティが、家族と一緒の時に横入りされたら本気で怒ってみせるという脚本なんかも、実に好み。
この手の映画ではお約束とも言える「最初はバラバラだった家族が、見事に一致団結した」事を示すシーンにて、挿入曲を効果的に用いている辺りも上手かったですね。
その他、シリーズ前作まで主役を務めていたクラーク・グリズワルドが登場するファンサービスに、妻の大学時代の知られざる過去なんかも、映画に深みと彩を与えてくれています。
「愛する妻に、新婚当初の笑顔を取り戻してもらう事」
「喧嘩の絶えない息子達に、仲良くなってもらう事」
という旅行の目的が、ラストにて完璧に近い形で果たされた辺りも、観ていて気持ち良い。
肝心の遊園地では、乗り物の故障に見舞われたりもしたけれど、そんなトラブルなんて些細な笑い話。
旅行に出かける前よりも、ずっと強い絆で結ばれた一家の姿を見ているだけで、何やらこちらまで「大切な旅行の思い出」を共有出来たような、素敵な気分に浸らせてくれる。
素晴らしい映画でありました。