260.《ネタバレ》 この系統は「シベールの日曜日」や「グロリア」とあるが、この作品もまた傑作!
物語は殺し屋であるレオンが一人の少女と交流していくという筋だが、殺し屋に相応しい血生臭い日々から幕が上がる。殺しの依頼、幽霊のように一人一人確実に殺していくレオンの得体の知れない恐怖。まるで殺戮マシーンさながらの活躍だが、そんな恐怖はどんどん無くなっていく(良い意味で)
日常では植木鉢を日光に当て、腕が鈍るので酒はやらず牛乳オンリー、後は銃の手入れと肉体強化という単調な日々を過ごした。一人孤独に。
そこにもう一人孤独な少女が“家族”として同居する事になる。
マチルダは腹違いの両親や姉から疎ましく思われ、唯一泣きついて来る弟だけが彼女に優しかった。
家に居る場所が無い彼女は学校にも行かず、孤独な生活を送っていた。
二人はある事件をキッカケに“家族”となった。
利発な少女と、野暮ったいおじさん。
まるで本当の親子のように学び、食べ、心を通わせていく。
少女は大人になりたいと背伸びし、男もまた一人前の人間になりたいと強く願う。
殺し屋に憧れる少女の夢、殺し屋になってしまった男の苦悩・・・この娘を自分のようにはしたくない。
二人はコンビとして数々の“仕事”を手掛けていく。
この映画の殺しは何処までも上品。飛び散る血痕、冷え切った後ろ姿のみで語るのみ。
銃声も無駄に大きくないのが良い。フランス人気質が超プラスで出た良い例だね。
しかし運命は二人を引き裂きにかかる。
復讐の“標的”はレオンの“依頼主”という皮肉。
囚われる少女、どんな状況でも助けに来る男。もうレオンはただの殺し屋では無くない。家族を守る一人の人間になっていたのだから。二人は互いを刺激する事で成長を遂げていく。
標的の最大のミスは“公職”に着いてしまった事。自分のテリトリーで人質を殺す事も、盾にする事もできないというのもまた皮肉なものだ。
ラストの戦いは完全に別の映画。冒頭との温度差が酷すぎる(大絶賛)
ただこのレオンの熱さ。もうレオンは殺戮マシンじゃない。熱い一人の父親だ。
彼は運命からは逃げられなかったが、キッチリ掃除屋としての“仕事”をやり遂げて旅立ったのだろう。
ボロボロになりながらも諦めずに。レオンの魂は、少女の心の中で生き続けるだろう・・・良い映画だ。