7.松川事件を基にした、半分社会派、半分喜劇、といった感じの作品。 主眼は、泥棒(というか、元泥棒)である主人公が裁判で証言する場面、ということになるのでしょうが、あくまでその描写は終盤に絞り、主人公の半生のあれやこれやが描かれてます。 なので、このオハナシは一体何処に向かうんだ?という感、無きにしもあらずですが、そこまでで描かれてきた主人公の人柄、あるいは人となりが、最後の裁判シーンで絶妙に活きてきます。裁判を取り上げた映画はいくつもあるでしょうけど、こんな楽しい裁判は、貴重です。 方言を駆使したセリフ回し、正直、ここまで訛がキツいと聴き取れない部分もあるのですが、それでもやはり、方言の強さ、というものを感じます。 【鱗歌】さん [インターネット(邦画)] 7点(2021-12-19 13:29:01) |
6.《ネタバレ》 山本薩夫監督が実際に起きた冤罪事件をもとにフィクションとして手がけた社会派喜劇。三國連太郎扮する主人公 林田儀助の泥棒時代のエピソードがかなりコミカルに描かれていて思った以上に喜劇要素が強く、どこかすっとぼけた味わいがあり、山本監督の社会派監督としてだけではない一面が感じられた。でもやはり、この主人公が列車転覆事件が起きる直前に線路を歩いていて怪しい9人の男とすれ違ったあたりからが山本監督の本領発揮といえる社会派ドラマになる。この事件で捕まった人たちの冤罪を証明するように周りから言われても、今は泥棒稼業を辞め、結婚して子供もできて、泥棒だった過去を隠して平穏な生活を手に入れている身では家族のことを思うととてもできないという林田の心の葛藤が胸を打つ。そんな林田が証言を決意するシーンはとても感動してしまった。ここまででもじゅうぶんドラマとして見ごたえあるのだが、ラストの証言シーンもみどころで、ここはもう三國連太郎の独演会といってよく、皮肉めいたことを次々と言うのだが、それが物凄く笑える。中でも「警察は自分よりも嘘をつく。嘘つきは泥棒の始まりというが。」というセリフ。元泥棒である主人公が言うからこその皮肉がこめられていて、笑えると同時にこのセリフにはそれ以上の底知れぬ凄さを感じた。喜劇映画のなかに冤罪という重いテーマを入れてしまうといつの間にかシリアスになりすぎ、喜劇的な部分がおなざりになってしまうのではと心配だった面もあったが、この証言シーンのおかげで最後まで喜劇映画であることを忘れない映画になっているのがいい。林田と腐れ縁の刑事を演じる伊藤雄之助のネチネチとした演技もやはり印象に残るし、妻を演じる佐久間良子や、冤罪被害者の一人を演じる鈴木瑞穂も良かった。でもこの映画はやはりなんといっても主演の三國連太郎に尽きる映画で、出演作の中ではあまり知られていないようではあるが、間違いなく本作も代表作の一本だろう。三國連太郎の喜劇といえば「釣りバカ日誌」シリーズをどうしても思い浮かべてしまいがちだが、やはりそれだけではないということを本作を見ると感じることができる。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-04-17 17:50:24) (良:1票) |
5.山本薩夫と言えば当代きっての社会派映画監督だ。戦争と人間の三部作や白い巨塔、華麗なる一族、不毛地帯など数多くの名作を作り、どの映画にも深い感動を受けた。この映画は題名からしてコメディっぽく、泥棒稼業の主人公らにもとぼけたおもしろさを感じる。ところが列車転覆という事件が起こるとやはり山本監督らしい社会派映画となった。他の方も言われているように、伊藤雄之助のねちねちとした追求と三國連太郎のとぼけた言い逃れが非常におもしろい。だがやはり前科者の更生のむずかしさや証言と新生活の葛藤なども良く表現できていると思う。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-03-08 07:42:21) |
4.《ネタバレ》 タイトルから単なるコメディかと期待していなかったが、いや、佳作の映画を引いてしまったらしい。松川事件をモチーフに、冤罪を認めたくない国家権力の圧力、前科の風評、無罪に苦しむ被疑者、これに揺れに揺れ出した答えの集大成が法廷に決して、映画が終わる。 伊藤雄之助はじめ癖のある役者、飢餓海峡を思い出す三國連太郎のすばらしさ、日本の法廷物にも良い物があった。 【min】さん [DVD(字幕)] 8点(2013-07-25 22:32:34) |
3.《ネタバレ》 泥棒の話が映画で好まれたのは、それが声を出してはいけない状況を伴うからかもしれない。サイレント映画ではとりわけ好まれてたんじゃないか。で、この映画、泥棒が忍び込んでいくと、子どもがフトンからじっと見ているカットになる、お菓子でなだめて帰ろうとすると、もっと頂戴と泣き出す。サイレント映画にでもありそうなコント。でもやっぱり社会派監督だから、松川事件がからんできてコメディに徹してはくれないが、三国連太郎のトボケぶりと、伊藤雄之助検事のネチネチぶりが楽しく、そもそも裁判という厳めしい公の場で、こそ泥の話をしていくその対照が面白い。泥棒というのはなぜ滑稽なのだろう、コソコソしているからか。弁護士が千葉真一だった。室田日出男は当然泥棒の一味だろうと思っていたら、進歩的な新聞記者だった。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2008-12-17 12:10:43) |
★2.《ネタバレ》 これ、法廷モノの傑作じゃないでしょうか。 三國連太郎の凄みが十二分に発揮されています。
ラストの法廷シーン。 ここにおける三國連太郎のパフォーマンスは、凄いの一言です。 三國連太郎という人物の持つ存在感、俳優としての実力を目の当たりにすることができます。 「三國連太郎は凄い俳優だ」。 本作を観終えて感じたことは、まさにその一言に尽きます。
一般的に評価の高い法廷モノの洋画『情婦』とかと比べても決して劣らないどころか、本作の方が上じゃないでしょうか。 本作は、法廷における臨場感あふれるユーモアも交えた心理戦、そして法廷劇の面白さを体感することができます。
この法廷喜劇の傑作を、もっと沢山の人に観てほしい。 もっと他の人にも観てもらって、レビューを書いてほしい。 そんな気持ちがふつふつと湧いてきました。 【にじばぶ】さん [DVD(邦画)] 7点(2008-09-28 15:57:00) |
1.《ネタバレ》 三國連太郎の演じる主人公は、泥棒上がりの前科者である。その前科者の三國連太郎の泥棒時代のエピソードとそこに関わる人達、また泥棒からは足を洗ってはいるものの、世間の眼はとても冷たい。かつてまだ泥棒時代だったある日、列車の脱線事故を目撃したことで、警察に色々と聞かれたりもする。あること、無いこと色々言われても、家族を思う者として耐える三國連太郎の主人公の姿に心を打たれる。そんな三國連太郎の裁判シーンでの笑えること。伊藤雄之助の警部に対し、嘘の証言を迫られたことを述べるシーン、それを見つめる妻、佐久間良子の表情も切ない。更にこの作品、元泥棒だった三國連太郎演じる主人公が警察の尋問に対して、思い切り笑える皮肉を沢山言うのだが、これがまた物凄く笑える。警察にあなたは泥棒する時は縄は用意しないのですか?という質問に対し、泥棒は縄など用意はしません。何故ならお縄になるなどと、言っては裁判を見に来ている客を爆笑の渦へと巻き込み、このシーンは私も大爆笑してしまった。更に凄いのが警察は嘘を言わせようとしている。嘘は泥棒の始まりではと言うようなことを言う。元泥棒による警察に対する皮肉いっぱいの凄い作品を観た気がする。法廷シーンでの三國連太郎の演技は本当に凄い。やはりこの人、ただ者ではないとこの作品を観て改めて感じた。三國連太郎=すーさんとばかり決め付けてはいけないし、そう思っている方に特にお勧めしたい。これまた間違いなく俳優、三國連太郎の代表作の一つだと言えるでしょう! 【青観】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2006-09-08 21:30:39) (良:2票) |