2.これはベルイマン初めてのオリジナル脚本、原作を持たない好き勝手に作った映画で、もう彼のモチーフの展覧会のようで壮観です。精神病・神と悪魔・原子爆弾の恐怖(のちの『冬の光』)・性と出産・自殺・子どもの遊び・夢・鐘の響き(時計好み)・白夜・映画撮影(舞台好み)…それらがちゃんと化合し切れないでゴタゴタと並んでいるのが展覧会としての楽しみ。冒頭の荒野を歩いてくるところでまず引き締まる。どこからがこの映画の芯なのかが分からない作りで、「ここまでは枠でこれからが本題」とクッキリせずにややこしくなっていってしまう。煙や霧がたなびき、無声映画が挿入され、悪魔も出てくるし、森が人になっている夢もあるし、不幸を一身に受ける売春婦と脚本家の苦悩とが、助け合えない世界ってことなのか。実質上ベルイマンワールドの出発点となった作品と思えば、分からないながら、なにやらありがたい。