1.初期のベルイマン作品は商業主義に徹した(そうせざるを得ない)作品が多く、それはそれで見易くていいとも思うのだが、ベルイマンのテイストが無いわけでもなく、その辺のさじ加減によっては中途半端な出来と評される作品もあって、これなんかは間違いなくその中途半端な作品になると思うんだけど、映画館鑑賞の恩恵も加味されてか私の中ではけっこう楽しめた方に入る。男女の身勝手な欲望と退廃的な行為が描かれるというその後のベルイマン映画に頻繁に登場するキーワードを散りばめながらの群像劇仕立ての見事な構成には思わず唸ってしまう。今見返せば話の構成がかっちりまとまりすぎの感もなくはないが、印象的な画も多くて、他のベルイマン映画でも見られる女の顔のクローズアップは独特の怖さ(全然怖いシーンでもないのに)を獲得している。敗戦直後の飢えたドイツ人たちに代表される暗雲とした描写がそのまま男女の暗雲とした心情と、これから続く男女の関係の明るくない未来を予見しているようだ。