1.アンデルセン童話を原作とする詩的な題材と、ルノワール流リアリズムの融合。
そのフィルモグラフィーの中でも最も詩情豊かなフィルムかと思う。
夜の街のミニチュア、多重露出、逆回転、スローモーションと、ふんだんなトリック撮影が作り出す目眩めく夢幻的イメージが、手工業的テクニックの温かみと相俟って味わい深い。
とりわけ、雲海を駆ける馬同士のチェイスの荒々しい迫力は圧倒的で素晴らしい。
白黒のコントラストの強いVTR版ではパンクロフィルムの効果をあまり確認出来ないが、雪の白の鮮やかさやカトリーヌ・エスランのクロースアップの魅力を十分伝えていると共に、逆に童話の挿絵のような効果を醸していてこれもまた情緒がある。
夜明けのエンディングは、遺作『小劇場』の一挿話とも響き合って感慨深い。