16.《ネタバレ》 日本の黒い夏 冤罪 の熊井監督の作品を探していて見つかりました。
医療サスペンスになるし実話にヒントを得たミステリーにもなります。
邦画でこの世界をコレだけ真面目に描けたのはすごいことです。
淡々と進んでゆきますので客観的に見るしかないので、
主人公の奥田瑛二と視点は近くなると思います。
国際映画祭出品作で世界的にも認められたこの作品は、
なんと86年作なのに白黒です。
なぜ白黒なのか疑問に思いただ気取ってるだけかと観ていましたが、
白黒でなければリアルな手術シーンは再現できないかも。
カラーであれば単なるキモイ映画になっていたかもしれない。
このたった2色のメリハリが社会派映画としても見られるような演出になっています。
難を言えば世界を意識したのか外人や日系(岡田真澄)の使い方が・・
この時代(いつの時代もですが)の日本の医学界、
戦争時の退廃的な生き方生かされ方、
文学的でもあるし過度な演出による娯楽的な残酷シーン・・
邦画でもこういう作品があったんだなぁと感心。
渡辺謙のセリフが的を得ていてそれでもなんかなぁと・・
なぜか戦時下だから人体実験をするっていうのは無理やりな説得力ある。
無差別に病院や公共施設も破壊したアメリカ兵だから、
人間ではなく物として扱うから死ぬまで実験をするというのも、
患者はどうせ死ぬんだから、
戦争で死ぬよりも実験に使うほうが世のためになる、
こういうことが本当に行われていたとしたら、
医学の発展とは犠牲の元なんだと暗くなります。
見終えたあともドヨ~ッと暗いまるでホラー映画のようなのですが、
見ごたえのある演出と感情移入さえ許さないような乾いた演技、
戦争映画を根本的に嫌いな私もこういう切り口なら観られます。
どことなく巨匠シドニー・ルメットを思い出しましたが、
それは言いすぎでしょうか・・
誰に感情移入できるか、
誰にもおそらく主人公にでさもできかねないのに、
実験手術されるアメリカ兵捕虜を好奇心で取り囲む日本兵。
彼らと同じ好奇心でこの映画を観ていることに気がつきました。
その後味の悪さも何か問いかけていて怖い作品でした。