★17.《ネタバレ》 日本から、そう遠くはないイラン国境での話。 実話に基づいているらしい。
障害を持った子供が出てくる。 その子供を支える兄弟たち。 実に過酷な現実が、淡々と描かれていく。
リアル感がハンパなく、見ていて辛い。 でも得るものは、あるだろう。 こういう苦難は、実は日本にも存在しているはず。 人生とは、苦難の連続だ。 とにかく、耐えて耐えて、時が過ぎるのを、ただ待つのみ。 それで、いつか幸せを感じ、ほっとできる日が来ることを願って。
この映画に出てきた兄弟たちにも、いつかは幸せで、安泰な日々が来ることを願う。 ただ、それしか言えない。 【にじばぶ】さん [DVD(字幕)] 7点(2017-06-11 01:02:51) |
16.おそらく車とは縁のない斜面で暮らす少年が、タイヤを密輸で越境させようとするが、タイヤはふるさとの側に転がり落ち、彼と弟とラバが未来の側に越境する、地雷原の広がる未来に。そういう話だ。イランのクルド民族の話だけど、障害者を持つ家族の話でもある。障害者を扱った映画って、いつもだとちょっと構えてしまうところがあるのだが、これはマッスグに入ってきた。生きることが苛酷なのは、ここでは障害者だけではないからか。このラバは姉が嫁入りする引きかえで手に入れたもので、姉の想いの代価になっている。だからラストの越境は、ここで戻ったり死んだりしては姉の想いが無駄になってしまうという後押しがあったからで、兄弟愛姉妹愛がここで一点に結ばれた、そこがいい。包囲する雪の白さの迫力。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 8点(2008-06-03 12:16:28) |
15.《ネタバレ》 この監督はもはや天才なのではないでしょうか。なにこのリアルさ、そして圧迫感。健気でイノセントな子供たちの見せる笑顔はポカポカしています。だからこそ時々彼らが見せる涙は逆に強烈なまでに痛々しい。兄弟だけの家族。お互いがお互いを信用し、過酷な状況の中でしっかり協力して生きています。2人の男の子と3人の女の子。病弱なマディへの愛情は本当に偽りがなく透んでいます。子供たちが懸命な中、無責任な大人たちが目立ちます。次男で大黒柱となったアユブは大人に交じって懸命に働きますが、いつになっても給料がもらえません。結婚したらマディの手術代を払うと約束した長女の義理の母は約束を守らずマディを追い返します。絶望の淵に立ったアユブはマディを連れて馬を売りにイラクとの国境へ行きますが・・・。ラストは痛々し過ぎて見るのが辛かったです。大吹雪の中しっかり一歩一歩進んで、歩くのだけでも辛いのにアユブはマディに向かって『大好きだよ』と優しく声をかけるのです。現代イラン映画における子供の役割というのは大変素晴らしいものです。現代の発展途上国に生きる私たちへ何かものすごくパワフルなメッセージを発信していると思います。『亀も空をとぶ』に合わせてゼッタイ必見です。 【未歩】さん [DVD(字幕)] 9点(2008-04-24 13:12:25) |
14.絶望的な環境の中でたくましく生きる子供たちの姿、などと言ってしまっては、かえってアリガチで安っぽくなるかもしれないが、本当にそうなんだからしょうがない(笑)。それがこれほど強い力を持っているのは、もちろんリアリティとかいうコトもあるんだろうけど(これまたアリガチな・・・)、しかし何と言っても、作品の背景に、人間の生命力と言うものに対する、無限の信頼、とでもいうべきものがあるからじゃなかろうか。周りの大人たちも、確かにいいヒトたち、親切なヒトたちばかりとは、到底言えないけれども、この環境では致し方なしか、と思えるウラにはやはり彼らの生命力というものがある。そして何と言っても、ラストシーン。有刺鉄線の柵(国境)と踏み越えていくモチーフは、『わが故郷の歌』とも共通のもの。痛々しくも無上の人間賛歌。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2007-12-03 00:25:32) (良:1票) |
13.《ネタバレ》 古来から南米の山岳民族は、土地の生産性が低い割にピラミッドなんか作ったりしちゃって重労働を課せられて来た民族だ。重い荷物を背負って山を越えるシェルパは、出発の前にコカの葉を一枚、口に含むんだそうだ。麻痺した肉体は、耐えられないような辛い仕事にも耐えてくれる。そうして麻薬大国コロンビアは誕生した…以上は枕でした。 本作では、イラクに向けて出発する密輸キャラバンが、厳寒の山越えに耐えられるようロバに酒を飲ませる。キャラバンが進み始めると、そこで映画開始後30分にして始めての劇伴が入る。このルールは全編に渡って適用され、馬が酔っ払っている時間にしか音楽はかからない。まさに南米を舞台にした『アギーレ/神の怒り』の冒頭と同じ音楽原理。 長い人類の歴史で、とても耐えられないような辛い仕事を耐えられるようにしてきたのが音楽の力だから。音楽は人間の営みのエッセンスだから。無限の繰り返しによる「麻痺」という快楽が、音楽の原理であり、オシゴトの原理でもあり、そもそも人生の原理でもあるだろう。BGMではないけれど、序盤に子供たちが唱う歌が、それを率直に表している。 人生は辛い。人生は酷い。人生に希望はない…それを言い続けて、言い続けて、みんな麻痺して行く。感じなくなって行く。 そんな中で、決して良心を捨てようとしない主人公たち兄弟。弱者を見捨てようとせず、その態度に疑問すら持っていない、偉い事とか良い事とかも感じていない、とてもストレートな主人公たち。劇中、彼らだけは麻痺を拒絶して醒めて続けている。彼らだけが現実を直視している。ポスターを買ってくる兄の姿に、麻痺の兆候が見えてはいるが。まだ彼らは大事な何かを失わずにいる。 …もしこれがテーマだとすると、エンディングのカットタイミング、そこへエンドロールと共に流れてくる音楽は絶妙で、恐ろしい。音楽は、人の中の何かを奮い立たせ、同時に何かを失わせる。本作の劇伴ルールの厳密さから考えて、エンディングに流れる音楽は悲劇の暗示だと推測した。 地雷にやられたのかもしれない。兄を見捨てたのかもしれない。ロバが売れなかったのかもしれない。手術が失敗したのかもしれない…その全ての可能性と、結果として訪れる心の境地を、あの音楽が癒してくれている。 この映画自体も、観客の心へ失った何かを取り戻させてくれて、また奪い去って行く。映画もある種の麻薬だと思う。 【エスねこ】さん [DVD(字幕)] 9点(2007-04-14 09:15:41) (良:1票) |
12.過酷な状況の中生きる兄弟の姿を淡々と描く、しかしだからこそリアルにぐっと胸に響きます。12歳の子供が一家の大黒柱にならなければならない、死と隣り合わせの危険な仕事、さらには決して衛生的とはいえない医療環境。仕事に行った先で写真をくれたのもまた働く子供なんです。ドキュメンタリータッチではありますが、この映画はフィクションなのでしょう。でも、クルド人を含め世界の多くの場所でこの映画はリアルなのだと感じました。 【アンダルシア】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2005-11-29 20:10:01) |
11.相対性理論が溢れるシュールな世界。人生というものと本当の意味で戦っている人たちが、今私たちと同じ時間の中にいる。でもそこには相対性理論がある。同じなのに、違う。彼らは私たちとは全く違った時間の中に生きている。酔っぱらった馬の時間の中に生きている。2つの異質な時間の、80分の人為的な邂逅。そして、私たちの時間の為の便宜的なエンドロール。だけれどエンドロールの向こう側で、酔っぱらった馬の時間は、私たちの時間との束の間の邂逅にも気付かず、今も続く。 【ひのと】さん 8点(2004-10-12 05:21:05) (良:1票) |
10.クルド人の手で作られた初めてのクルド語の映画ということですけど、本作ではクルド民族「特有」の事情は一切描かれていません。極貧を必死に生き抜く子供達の映画は世界中で作られており(要するに、世界中が貧困に喘いでいるのです)、物語的にも珍しいものではありません。しかし、極めて映画的な演出や画作りがなされており、それらのジャンルの中では非常に優れていると思います。大地の張藝謀、砂漠のモフセン・マフマルバフ、そして山岳の新人バフマン・ゴバディといった感じでしょうか。特に、身体の小さな不具の長男と理想の身体を持つボディ・ビルダーのポスターの対比に、監督の冷徹で深い洞察力を感じました(並の監督ならこんなこと出来ない)。本作は単なるお涙頂戴映画ではありません、7点献上。 【sayzin】さん 7点(2004-09-14 23:14:52) (良:1票) |
|
9.母はお産で死亡、その上父が地雷で亡くなって孤児になった子供達。まだ12歳の次男が兄弟姉妹の生活を支えるため懸命に働く。 食べるだけでも精一杯なのに長男は難病で手術代も欲しいし妹は学校に通わせてやりたいと、危険で過酷な国境越えの密輸仕事をするアヨブはすでに一人前で父親代わり。 恵まれた暮らしの子供とは比べものにならないほどしっかりしてて大人っぽい。 こうした貧しい境遇にもかかわらず病気の兄をみんなが大切にし助け合って暮す優しさに心を打たれる。 【きのすけ】さんも言われてた「人生は苦労ばかり、、」という歌には、過酷な環境に 生まれ合わせた子供達の苦難の運命が見事に唄いこまれている。 これはドキュメンタリーではないけれど、緊張が続くイラン・イラクの国境地帯に暮すクルディスタンの人たちの生活は現実がこのとおりなんだろうと思う。至る所に地雷があって作物も作れず生活を脅かされ、ひいては子供達がこんな厳しい人生を強いられるのだと思うと、争いばかりしている大人ががつくづく愚かしい。 【キリコ】さん 8点(2004-09-10 19:56:44) (良:1票) |
8.イラン映画はその誠実さは伝わるものの堅苦しいところがちょっと苦手なのですが、この作品はマジッド・マジディに代表されるようなイラン映画とはかなり趣が違います。やはりクルドとイランは全然違うんだなぁ(当たり前か)。なんとなく昔見た「路」と言うトルコ映画を思い出しました。グッとこらえた感情が、それでも全身からにじみ出る子供たちの姿はまさにドキュメンタリーのよう。兄弟たちの為に必死で働くアヨブですが物理的に子供にはできないことってあるんですよね。厳しい自然と共に生きるのは彼らの宿命。だけど、紛争や地雷で親を亡くし、子供が急いで大人にならざるを得ないのは納得できません。厳しい生活は見ていてツラい。でもその感情は同情とは全然違うんです。誇り高く美しい彼らの顔を見て、毎日文句たらたらで生きている自分を恥じ入ってしまった映画でした。 【黒猫クロマティ】さん 8点(2004-09-08 14:15:57) (良:1票) |
7.展開される過酷な世界に、成す術なく涙が溢れた。こんな経験は初めてでした。人は貧しいほどに助け合い生きているんだと言う事を殊更に痛感し、そして死と向かい合うことで己と孤独に対峙する。そんな中でも、マディをしっかと抱きアーメネの手を握り締めるアヨブの、地に足を付けた健気な姿に自然と涙する。・・なんといっても、潔いナチュラルな演出。。コレは驚嘆に値する!そして、あのラスト。左右を見渡し、少し戸惑いながらも踏み込んだ1歩は、一瞬であるかも知れないが希望に満ち満ちている。。 【れこば】さん 10点(2004-09-07 18:05:22) |
6.こういう、美しく凛とした人間の尊厳を見せ付けられた作品に関しては、うまく言葉が出ないです。どんなに貧しく生活が悲惨であろうとも、あの家族には「気高さ」がある、と思う。 【ぐるぐる】さん 8点(2004-09-05 21:27:09) (良:2票) |
5.何が辛いかというと、子供たちが辛い思いや悲しい思いをしなければならないということです。大人は現実から目を背けたり逃げたりするすべをもってるけど、子供たちはまっすぐに体当たりしてしまう。私はこれをドキュメンタリーだと思って、撮影後お金をもらったお兄ちゃんやお姉ちゃん、妹、マディくんがにっこり出来たと思いたい・・・(黒猫クロマティさん薦めて下さってありがとうございます~)。 【ジマイマ】さん 7点(2004-09-02 14:54:16) |
4.私はハリウッドのエンターテインメント映画が好きなのです。やっぱり面白く観れることって大事だと思うので。だから本作のような映画は苦手な部類なのですが…意外。良かったです。日本とあまりに違う生活につい見入ってしまう。何より、そこでの人々の生き方に感動を覚えました。特にアヨブお兄ちゃん!偉すぎる!こんなふうに魅力的な人をもっと観たいです。 【どろ】さん 8点(2004-09-02 03:02:35) |
3.病気の兄の手術代を稼ぐために、密輸品を運ぶ仕事をする12歳の少年。地雷や警備隊が待ち受けるイラクへの密輸の道中。酒を飲ませて「ラバ」に密輸品を運ばせる所からタイトルが付けられていますが、それならタイトルは「酔っぱらったラバの時間」の方がいいような・・。 映画が描写するあまりに過酷な描写に思わず目をそむけたくなったけれど、世界のどこかでこういう「現実」が起きているという事は心の片隅に止めておかなければならない、と思いまた・・。ラストシーン。初めは、ちょっと説明不足かと思ったけれど、後から思うと、「人間の強さ」や「希望」を暗示するものだったのでしょうか? 【ムレネコ】さん 3点(2003-11-15 10:53:24) |
2.またまたこんな監督が出てきてしまうのだから、本当に驚嘆すべしイラン映画界。クルディスタン出身のゴバディ監督は、あのサミラ・マフマルバフの「ブラック・ボード」にも自ら教師役で出ていたが、正直、較べられるものじゃない。映画好きなら、ぜひ見てほしい。損はさせないから。 【青人】さん 9点(2003-04-27 15:06:58) |
1.えっ!もぅ終わったの?上映時間1時間20分という、昨今の映画の中にあってこれはむしろ短編といってもいいほどの作品だが、いたずらにダラダラ長いばかりでさっぱり印象が残らない映画が多い中、これほど濃密な内容の作品は稀有だといえる。映画はイランとイラクの国境山岳地帯の寒村を舞台に、そこに住むクルド人たちの悲哀と、両親と死別し懸命に生きていこうとする幼い姉弟たちの姿を克明に描いていく。難病の兄を救おうと、大のおとなでも危険な密輸仕事を手伝う次男や、見知らぬ土地へ嫁がされる長女の姿に、貧しさゆえ互いに気遣い力を合わせて生きていこうとする子供たちのけなげさに胸打たれると同時に、地球の向こう側に厳しい現実が紛れも無く存在することを改めて思い知らされる。終盤、密輸のタイヤを運搬させるロバに、(おそらく寒さの気付けの為だろうか)酒を飲ませるシーンがあって、そのあと警備兵の待ち構える国境近くで本当に酔っぱらってしまった事から、次男らが死と直面する事となる。常に危険と隣り合わせで生き抜いていかなければならない彼らの長く苦しい闘いと、子供たちの行く末を暗示するかのように映画は終わる。テオ・アンゲロプロス作品を彷彿とさせる雪山の美しいシーンなど、セミ・ドキュメンタリーのような肌ざわりだが、あくまでもこれは劇映画なのだと理解するには、多少の時間を要するかも知れない。 【ドラえもん】さん 8点(2003-02-07 00:19:06) |