1.単なる覗き見趣味かと思ったらなかなか見ごたえのあるドキュメンタリーでした。何しろ死刑囚の肉声ですから・・・。生前のアイリーン・ウォーノスと親交のあった監督にしてはずいぶん引いた視線で、私情を交えずに淡々と描かれているところにプロっぽさを感じました。これを見て気づいたことは、「モンスター」でシャーリーズ・セロンが必死に真似していたのは逮捕後11年も経ったこのフィルムのアイリーンだということ。逮捕直後の裁判の映像などを見ると、30代前半のアイリーンは年齢の割には若干老けた印象はあるものの、決してあんなお化けブタではありません。確かに歯並びの悪さは目につきますが、ちゃんと身ぎれいにしてお化粧だってしていたし、目の大きな、笑顔の魅力的な女性です。必要以上にアイリーンの醜女ぶりを強調した「モンスター」がいかにキワモノ趣味だったかということがよくわかり、どうしてもあの映画を好きになれない人間として非常に納得出来ました。死刑執行が近づくにつれて、明らかに正気を失って行くアイリーンや、25年間一度も会っていない娘の話を聞かされる母親の表情、十代の頃のアイリーンの悲惨な状況について証言する昔の友人たち、胸をつまされるシーンも多い作品ですが、下手な小細工をせず率直な語り口で、センチメンタリズムに走らず、あくまでもドキュメンタリーとして勝負した、一見の価値ある作品だと思います。