9.《ネタバレ》 冒頭からテンポ良く話が展開し分かり易く見ていて楽しめましたが、後半になっても勢いはそれ程付かずに討ち入りのシーンも迫力はあまり無く、見終わってみれば盛り上がりに欠けてしまったように感じました。
木場政の中に魅せるべき役者さんの数を増やした為に逆に印象が弱くなってしまったみたいで、討ち入りシーンに役者さんの数を掛けて迫力を倍増させる事が出来ずに、討ち入りシーンをみんなで割ってしまいそれぞれが淡白に仕上がってしまったかのようでした。
しかし、ドラマ部分ではそんな彼等の人間関係や男女の情などを上手に絡ませて木場政親分がいなくなってからの若い彼等の粋々とした姿を楽しむ事が出来ました。
鉄と粂次や清治とお咲の関係ややり取りを始め、お柳の姐さんっぷり全開の落ち着いていて慈愛に満ちた佇まい等良い所は沢山有りましたし、話自体も沖山一家に対する木場政の討ち入りに行く為のマイレージの溜め方も無理がなく良かったと思います。
木場政陣営の俳優さん達は勢い任せの人もいましたが、敵役の沖山兄弟は確かな演技力と滲み出るようなダークな雰囲気を感じられました。
また、お柳役の藤間紫さんの虎を留置場に迎えに行くシーンや鉄が質入れした事に対して諭すシーンで見せる柔らかい表情はかなり魅力的です。
熟しに熟した女優パワーにやられてしまい色々ウィキ等で調べてしまいました。
しかし、健さんの登場シーンでのインパクトの弱さや前述した煮え切れない討ち入りの為に任侠映画としては中途半端な出来になってしまったように思います。
長吉と沖山の立ち回りなどは弱い沖山に対してそれなりの時間を掛ける為に健さんの刀捌き(かなり大振りです)も彼に付き合いカッコの良いものとはなっていません。
それならば3~4人力強く切り倒して時間を稼いでから一瞬にして切り伏せて貰いたかったです。
この様に内容的にも迫力不足の立ち回りを前半のドラマシーンと同じようにミドルからロングに近いカメラアングルとスピード感がないカット割りで説明的な印象になっていたので緊迫感や高揚感は感じられませんでした。
内容的にも映像的にもラストのカタルシスが爆発しない任侠映画では一体何の為に前半にマイレージをコツコツと溜めていたか分からなくなってしまいます。
作中で健さんが「仏作ったからには魂だけは入れときたい」と言っていましたが、任侠映画の不文律を踏襲して頂いて娯楽作品を作ったからには盛り上げる所は盛り上げて貰いたいと思いました。