★27.《ネタバレ》 三船と志村喬の絶妙のコンビ。 黒澤さんの映画の大黒柱だ。
今の日本映画は、人間の微妙な綾を描こうとするが、 黒澤さんは、ドラマツルギーを成り立たせるために、 分かりやすいキャラ設定で挑む。 だから人間賛歌の物語も、分かりやすく面白い。
今の時代、こんな分かりやすいキャラではバカにされるかもしれないが、 それでも黒澤さんだけの芸当にしてしまうのは惜しい。 【トント】さん [DVD(邦画)] 7点(2020-06-02 09:32:48) |
26.《ネタバレ》 とにかくもう、悪役となっているマスコミ側が徹底的に憎たらしく描かれていて、いっそ痛快。 「記事なんか少しぐらい出鱈目でも、活字になりさえすれば世間が信用するよ」 「(抗議されたら)誰も読まないようなところに謝罪広告を出せば、それで済む」 と言い放つ姿には、狡賢い悪党としての「大物」感すら窺わせました。 観客側としては、当然そんな彼らが敗訴して、溜飲を下げる展開を期待する訳なのですが、どうも毛色が違う結末。 分かり易い人情譚として纏められており、感動的と言えば感動的なのですが、正直ちょっと不満が残る形でしたね。 三船敏郎演じる原告側からすると「被告による買収が発覚して勝てた」という訳なのだから、どうも相手側の一方的な自滅というか、勝利のカタルシスに乏しくて、法廷物としては如何なものかと思われます。 志村喬演じる弁護士が、最後の最後で正義を貫く事になるキッカケが「愛娘の死」という点に関しても、申し訳ないのですが娘が登場した瞬間に(あっ、この子死んじゃうな……)と覚らせるものがあったせいで、どうにも予定調和な印象が拭えず、残念でした。 長所としては「横暴なマスコミに対し、決して泣き寝入りはしない毅然とした態度」を描いている事。 そして山口淑子演じる声楽家の「尊敬のない人気なんか沢山だわ」と言い放つ姿から、誇り高く生きる人間の美しさを感じられた事でしょうか。 新進気鋭の若き画家という、他の作品ではあまり見かけない役柄を演じている三船敏郎の姿にも、流石と思わせるものがあり、それだけでも観る価値がありましたね。 独特の渋い声音で 「僕達は生まれて初めて、星が生まれるところを見たんだ」 「その感激に比べれば勝利の感激なんて、ケチくさくて問題にならん」 と言われてしまえば、そういうものかと納得しかけてしまうのだから、全く不思議なものです。 【ゆき】さん [DVD(邦画)] 5点(2016-08-15 20:35:56) |
25.《ネタバレ》 弁護士生命を懸けた逆転さよならホームランのカタルシスなんてものは一片もなく、負けるわけがない裁判をこんなにこじらせた善良なつもりのバカのどうしようもなさへの徒労感だけが募る。星が生まれた?ウソコケ。一連の蛭田弁護士の法廷でのふるまいが、「蛍の光」を合唱してから練り上げたシナリオ通りだったというスジだったらと思うと残念でならない。 【なたね】さん [DVD(邦画)] 5点(2015-10-24 11:32:54) |
24.長かったなぁ~。本当に長く思えるくらいだらけたように感じました。 それだけ。 【クロエ】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2013-01-07 22:22:56) |
23.昔からこんなことがあったのねという意味では、 今鑑賞してもそれほどの古さを感じさせない、狙いどころの面白い作品。 ストーリーの流れ自体は悪くないと思うけど、三船敏郎演じる猪突猛進型の主人公はまだしも、 志村喬の弁護士役の描写の掘り下げが甘く、裁判劇としても人間ドラマとしても、 今一つ物足りなさを感じてしまう。総体的に小粒な作品という印象は拭えないけど、 それでもそこそこ楽しめる作品かと思う。 【MAHITO】さん [DVD(邦画)] 5点(2012-02-13 01:14:10) |
22.《ネタバレ》 画家と声楽家が恋人同士であり、旅館に同泊したなどと、でっちあげ記事を雑誌に書かれる。雑誌社にしてみれば、真実かどうかは重要ではなく、売れればよいわけで、二人の談笑写真があるのが強みだった。画家は正義感が強く、泣き寝入りはせず、雑誌社を告訴する。声楽家は最初は消極的だったが、心なきファンレターがを受け取った事と、画家の熱意にほだされ、告訴に同意。ここから法廷対決のはずが…、話は卑劣弁護士の改心譚に転調する。弁護士は雑誌社に金で抱きこまれ、会社側に有利になるように仕組む。弁護士はうだつが上がらず、寝たきりの娘を抱えて経済的に困窮している。画家と声楽家は弁護士の娘に会い、その清らかな心に触れ、その父親の誠心を信じた。裁判は雑誌社優位に進んだが、最終的に弁護士が自らの買収を暴露する事により二人の勝利となる。二人にとって裁判の勝利より、弁護士が改心し、真人間になった事の方が嬉しかった。 ◆脚本に一貫性がない。無責任な雑誌記事により「醜聞」に曝された被害者の憤慨と苦悶、どうやって「醜聞」に対抗するかという問題が、後半になると「醜聞」はどうでもよくなっている。又二人の「醜聞」なのに声楽家の扱いが等閑なのが奇妙だ。後半になると会話はほどんどなく、裁判でも一切発言しない。刺身のツマ扱いだ。二人が協力しあい、その過程で恋愛も芽生えるというのが自然の流れだろう。協力の結果、裁判に勝ち、弁護士も改心し、恋愛も進展することでカタリシスが得られた筈だ。 ◆弁護士が改心した理由だが、これは本人が何かを経験したとか、誰かに影響を受けたという事ではなく、ただ最愛の娘を失くした事が契機となっている。問題の解決策としては、実に安直である。 ◆この映画は当然描くべきことを描いていない。第一に娘の死ぬ場面だ。最大の泣かせ場であり、弁護士がどれほどショックを受けたを示す絶好の機会なのに。「いきなり死にました」では観客もどん引きである。その伏線があってしかるべきである。 次に告訴を逡巡していた声楽家が告訴を決意する場面。心の推移を見せてこそ感情移入できるというもの。弁護士が酒場で皆と「蛍の光」を合唱する場面がある。正しいことをしようと心に念じているが、それがなかなか実行できないもどかしい心情を巧に演出していて見事である。このような演出を声楽家にもすべきだった。バランスが悪いのである。法廷闘争も緩くて魅力薄。 【よしのぶ】さん [ビデオ(邦画)] 6点(2011-10-11 20:43:44) |
21.《ネタバレ》 う~ん、微妙。雑誌ジャーナリズムの横暴から法廷ものを経て、最後は改心もの。テーマが入れ違いに現れて、全体として見応えを殺していました。法廷でダメ人間が改心するって、シドニー・ルメット&P・ニューマンの「評決」などがすぐに思い浮かぶけど、こちらは途中からそのテーマに切り替わった感が強くて深さを感じません。途中で何度もあった改心する機会を引っ張った理由は、志村喬の最終答弁に告発と告白と懺悔を集約して一気に解決させたかったから。そこは強引さが否めず呆気なくて拍子抜けでした。そもそも、原告側の弁護人が被告に買収されていたことが、争点を決定づける証拠になるものだろうか? 「情婦」が本作の7年後の製作だから、このジャンルはまだまだ未開拓の部分が多かったのだろう、と勝手に納得しておこう。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 4点(2010-11-15 23:47:15) |
20.1950年当時、これをみて心の底から感動した人がどのくらいいたか知りたい。 【みんな嫌い】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2010-08-17 19:42:18) |
19.作品の出来以上に、この時代にこういうテーマを取り上げたことに黒澤監督の先見性を感じる。 志村喬は様々な役をこなす人だが、ここまでダメ人間を演じているのはあまり記憶にない。 【きーとん】さん [ビデオ(邦画)] 6点(2010-07-26 00:09:54) |
18.《ネタバレ》 実にいい。説教臭いというか、いかにも作りもののベタなヒューマンストーリーなのに、実にいい。 決してスマートなシナリオじゃなく、ダイナミックで斬新な映像を使っているわけでもない、役者の演技や設定もあざとかったりオーバーだったり、途中のワンシーンワンシーンや使われる音楽もそれぞれ切りだしてしまうと粗があるように思えるのに、観終わると映像と音楽と演技が見事に調和してつながっていたように感じる。 編集の妙、展開の妙であり、実にうまい演技の志村喬を実質の主役に据え、三船敏郎の個性をスポイルすることなく完全に志村の引き立て役にしたキャスティングなど、監督の手腕に脱帽です。 志村喬の演技では、この後の作品「生きる」が有名だけど、こっちの方が人間臭くてもっといいかも。 【nobo7】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-07-07 03:05:04) |
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17.テンポ良く、志村、三船の演技力はさすがなのだが、台詞がいちいちクサかったり、中盤あたりで読めてしまうありきたりなストーリーで、他の黒澤映画に比べあまり見応えが無かった。 【おーる】さん [DVD(字幕)] 6点(2010-02-05 10:28:27) |
16.《ネタバレ》 三船敏郎が持ってきた花を桂木洋子が床に投げて泣いていたとき、母親役の北林谷栄が桂木洋子の心中を三船に話し続けるのだけど、この違和感は何なんだろうと思ってしまいました。さすが古い映画なのであらすじからラストまで読み切れてしまいます。好きなシーンでもあればと思ったのですが、ほとんど記憶に残りませんでした。関係ないけど千石規子は、すみえさんって名前がぴったりでした。 【omut】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2008-07-08 04:06:46) |
15.それまでの「三船/志村」コンビの映画に比べると、どうも煮え切らない映画です。今回の三船敏郎は画家役なので、『醉いどれ天使』や『野良犬』のようにギラギラした暑苦しい演技(これこそ若い頃の彼の魅力だと思うが)も発揮できず、どことなく窮屈な印象。そのうえ、いつもは頼りになる志村喬御大も本作では最後の最後の最後まで役立たず。イタい、実にイタい! 話としても、前半は言論の自由を悪戯に振りかざすマスコミへの痛烈批判、後半はダメ人間・蛭田の改心物語といった具合にピントがあっておらず、裁判結果そっちのけで「お星様」の話をされたって「はぁ?」って思っちゃいます。 【とかげ12号】さん [DVD(邦画)] 5点(2008-04-05 12:27:16) (良:1票) |
14.黒澤明監督の初の松竹作品。プライバシー侵害を扱った法廷劇が中心だと思っていたら、ダメな弁護士が立ち直るまでの過程が中心でちょっと驚いたが、その弁護士の人間ドラマがなかなか面白かった。(その分、法廷シーンはちょっと物足りない。)黒澤監督の映画では欠かすことの出来ない俳優の一人である志村喬がこの役を演じているのだが、寡黙な役の印象の強い彼がやたら饒舌なキャラクターで最初出てきた時にはミスキャストだと思ったが、後半は志村喬が抜群に良かった。とくに、「蛍の光」を合唱するシーンは素晴らしい。これが、後の「生きる」につながっていくんだろうなあ。黒澤作品で久しぶりに見る三船も、後々演じることになる威厳のある存在ではなく、ギラギラしている役でもないがこういう演技も新鮮。小沢栄太郎のいやらしさも板についている。しかし、山口淑子はなんか仏頂面だし、桂木洋子に冠を被せているシーンではひいてしまった。二人ともあまり見たことがないだけに魅力を感じることが出来なかったのは残念。「素晴らしき日曜日」のレビューで中北千枝子が魅力的だったと書いたけど、やっぱり、川島雄三監督や成瀬巳喜男監督のほうが女優を魅力的に撮ることに関しては黒澤監督よりも優れていると思う。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 6点(2008-04-02 02:10:58) (良:1票) |
13.《ネタバレ》 今から56年も前から、プライバシーを侵害してメシを食うような下劣な雑誌があったんですねー。バイク好きの青年画家を演じたこの作品の三船先生もカッコいいです。うだつのあがらない弁護士役に志村喬。「酔いどれ天使」とは一転、原告の弁護士なのに雑誌社の社長に丸み込まれそうになったり、見ててもヒヤヒヤ。最後の最後で威信を取り戻すんですが、裁判の展開はかなり強引ですね。人権侵害、言論の自由の論争に映画としてメッセージを吹き込んだようなテーマですが、侵害された事についての裁判のやりとりが中心ではなく、むしろうだつのあがらない弁護士が、雑誌社側からの誘惑や、結核の娘の死を乗り越え、真の正義に目覚めるまでの過程が中心ですね。その展開を予め分かってて観たら良かったのでしょうが、もっと熱く原告側がプライバシーの侵害を告訴してゆく様子を観たかったかなあと思ってしまいました。あとこの頃の黒澤監督は1シーンをかなりじっくりゆっくり撮ってますね。全盛期のあのテンポの良さを期待するとちょっとかったるく感じる部分もあります。決して悪い映画ではありませんが「天国と地獄」の次に観たのは順番間違えたかな?と思いました。 |
12.《ネタバレ》 人間性を問う黒澤作品。「良心とは?」「嘘でもおもしろければ正義か?」ということを、エンターテイメントとして(ここが超重要)映画にした作品。この作品を観て、嘘くさく、けむたく、甘すぎる感覚を持つ僕たちはすでに病んでいるのかもしれない 【ようすけ】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2006-04-22 23:33:44) |
11.《ネタバレ》 映画監督って、30歳ちょっとぐらいで一流の仕事をしながらその後パッとせずに埋もれてしまう早熟型と、キャリアを積み重ねて完成されていくタイプがあるように思えますが、黒澤さんは後者の方になるんじゃないでしょうか? この段階ではまだまだ・・・。「野良犬」「酔いどれ天使」でようやくA級に達したと判断いたします。 これは豪華キャストの無駄遣いに思えます。桂木洋子に冠を被せるシーンにはしらけてしまいました。黒澤さんを愛する者ですが、それ故に批判した次第です。ご容赦ください。 (時系列で誤りがありました。が、文意をお察しください) 【オットー・クレンペラー】さん [DVD(邦画)] 3点(2006-04-21 20:06:16) (良:2票) |
10.《ネタバレ》 最後の裁判が成立する過程ムチャクチャ飛躍しすぎ。多分、相手の百戦錬磨の弁護士が潔く「成立を認めます!」と言うところを描きたかったんだろうが、ちょっと無理ありでそこがマイナスになっていると思う。惜しい。実に惜しい。 【シン】さん [ビデオ(字幕)] 6点(2005-09-05 01:17:57) |
9.《ネタバレ》 「生きる」と同工異曲。、、、、、つまり、庶民的な小悪が、どう変化して、美しく、正しい人生が送れるようになるのかを主題としている。「醜聞」では、娘の死が契機であり、「生きる」は自分の目前の死が契機であった。→何かを生け贄として殺さなければ、人間は変われないという発想も共通。、、、、さらに、冬という季節の設定、喫茶室の「蛍の光」「ハッピーバースデー」の使い方も類似。また志村喬の、言い出したいのだが、本心で抱いていることがなかなか言葉にならないという演技も同じ。、、、、、なのに、「生きる」は多くの人の共感を呼ぶ一方で、「醜聞」はあまり省みられないのは何故だろう。、、、、、それは「生きる」の公園のブランコシーンがあまりに印象的だからだろうか、あるいは「生きる」の志村喬の方が美しい存在に見えるからだろうか。、、、、、でも僕は、この「醜聞」の志村喬の方が、「生きる」の志村喬よりも好きだ。なぜなら、僕たちの日常により近い存在に見えるから。、、、、、自分はウジ虫だ、だめな人間だと考えていながら、なかなか変わることができず、「蛍の光」を歌っても、結局変われない。、、、それはああしたい、こうしたいと決意した積もりでも、ままならない自分たちの姿に重なる。、、、もしかしたら最後まで変われないのではないか、そういう展開もありなのかと思って見ていると、最後の法廷シーン。、、、一瞬の良心の輝き。、、、この瞬間的な美しさを見るためだけに、それまでのストーリーは展開している。 【王の七つの森】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-07-02 09:10:59) |
8.キーワードは「星」。星=人間の美しい心、良心といったようなもの。 これはスキャンダルそのものがテーマではなく【水島寒月】さんが言われたように人間はこうあってほしいという理想像を描いたもので、青臭いほどの直球です。でも私は単純なのでストレート大好き。 ゴシップ記事を書いた雑誌の編集長はその対極にあるような人物として描かれる。 餌食にされた画家の青江はまっすぐで爽やかな好青年で、これを若い三船が肩の力を抜いたように自然に演じている。 特に根はいい人なのに心の弱い貧乏弁護士の志村喬が素晴らしく、この作品が好きというのもイコールこの作品の志村さんが味わい深くて好きだから。 クリスマスの夜山口淑子が歌う「きよしこの夜」、その後年越しのバーで蛭田弁護士が酔っ払いながら「今年はウジ虫だったが来年は娘に恥かしくない人間になるぞ」とクダを巻きつつ泣くのに感動し、皆で歌う「蛍の光」に胸が一杯になり思わず涙が出た。意外だったけどクリスマスにふさわしいような美しい作品だった。 登場人物もそれぞれが懐かしいやら珍しいやらだが、北林谷栄が老けてないのを始めて見たのでびっくり(蛭田の妻ね)。 【キリコ】さん 8点(2004-09-12 00:06:30) (良:2票) |