7.《ネタバレ》 リメイク作品であるジェイソン・ステイサム版を今年観たばかりだった。
オリジナル版を鑑賞し、何より強く思ったことは、想像以上に先立って観たリメイク版が洗練されているということだった。
ストーリーや諸々の細かい描写において、オリジナルである今作を踏まえつつ、より理にかなった改修がされていたということを知った。
詰まる所、殺し屋アクション映画の隠れた名作として名高い今作よりも、リメイク版の方が圧倒的に面白かったと言える。
数多いオリジナル作品とリメイク作品の関係性においては、それは非常に珍しいことだ。
このオリジナル版がリメイク版よりも劣っていた点は大きく二つ。
一つは、物語の発端となる暗殺依頼、主人公の恩人であり友人のハリーを組織の指示通りに殺すくだりの軽薄さ。
依頼の忠実な遂行のためとはいえ、長年の友人である人物を殆ど疑念も抱かぬまま、淡々と殺してしまうのは如何なものか。
このハリーの息子が、この後のストーリーの主軸に絡んでくるわけだから、ハリーというキャラクターとその暗殺シーンの軽薄さは、ただただ主人公の人間的魅力を削ぐだけだったと思う。
二つ目は、ラストの顛末。
大筋の流れはオリジナルもリメイクも変わらないが、プロフェッショナルとして主人公が、結局最後まで生き残る様を描いたリメイク版に対して、オリジナル版ではそういう描写が無いので、「え、それで終わり?」と非常にフラストレーションが溜まる結末になってしまっている。
どちらも、主人公の魅力そのものに大いに関わる要素だけに、映画自体の優劣に非常に関わっていつと思う。
ただそれでも、今作の映画としての面白味は充分ではないがきちんと備わっている。
その大きな要因は、何を置いても主演のチャールズ・ブロンソンの魅力そのものだと思う。
実はチャールズ・ブロンソンの主演映画を鑑賞するのは初めてだったが、無骨な佇まいの中に時折垣間見せるチャーミングさが、多くの映画ファンから愛された理由であることは、この一作品を観ただけ明らかだった。
是非、他の主演映画も観てみたいと思う。
そして、この往年の名優の魅力は、アクション俳優というジャンルの現在唯一の“生き残り”と言っていいジェイソン・ステイサムの魅力と極めて似通っている。
そういう部分も、リメイク作品が優れたアクション娯楽に仕上がった要因の大きな一つだと思う。