3.《ネタバレ》 個人的にはここ数年でもっとも楽しみにしていた映画。無機質で美しく、斬新ながらもどこかレトロなサイバー空間、そこに鳴り響く「ダフト・パンク」。カッコよすぎる未来の映像は、映画の歴史を変えるというほどの魅力を放っている。最大のウリである「映像」は勿論スゴイが、それだけではなく、人物の内面を描こうとしている点も評価したい。ストーリーは整合性が無く、駆け足気味なトコロもあるが、そもそもこの映画は、ルールやリアリティがぶっ飛んだ設定の上にあるので、ドラマの展開に焦点を当てるというのは成功していると感じる。テーマは「親子の絆」だろうか。とてもディズニーらしい主張だが誰にとっても大事なことだ。「父に見捨てられたのかも知れない疑念を持ちながらも、父を諦めておらず、その意思を尊重している」というサムの心情を冒頭、現実世界のアクション・シークエンスに組み込んでおり、グリッドでの再開のドラマが際立っている。喜びに満ちたハグや「僕らはいつだってチームだ。」というやり取りがあるからこそ、最後の別れは熱く胸に迫る。また「完璧」について追求しているのもポイントだ。ウィルス=「不完全なもの」とみなされたアイソーという奇跡の生命体は勿論、人間だって完璧な奴なんかそうはいないし、完璧な一日なんてモノもそうはない。曇ったり雨が降ったりするものだ。でも、だからこそ、太陽の温かみや綺麗さを感じるし、不完全だからこそ、互いに喜びを共有できるのではないのだろうか。希望に満ちたこれもまた「らしい」メッセージ。現実世界の夜と、グリッドの暗く無機質な世界から一転、ドゥカティで風を感じながら日の出を目にして微笑むクオラが印象に残る。その笑顔、そのシーンの美しさといったらない。最後までとても美しい映画だ。映画は誕生以来、カラー、トーキー、アニメーション、CGとその表現方法を進化させてきた。30年近く前、CG黎明期に製作された「トロン」は当時多くのクリエイターに衝撃と影響を与えたと聞いた。そして現在、3Dという新たな表現を手に入れた映画の歴史の中に「トロン:レガシー」という映像革命が新たに名を刻んだ。是非劇場で楽しんで頂きたい。