39.悪くない。しかし自分にはあんまり合わず。 あと人にも薦められない。 【虎王】さん [DVD(邦画)] 6点(2010-08-13 00:16:39) |
38.《ネタバレ》 最初は「人形の家」を人形で描く現代版か、と思っていたが、もっと広がって現代人一般の空虚がテーマらしい。心のうつろさ・常に誰かの代理であるむなしさ、みたいなもの。それは何となく分かるんだけど、広がりすぎて焦点を結べなかった印象も残る。周辺の「いろどりの人々」が、ちょっと作者の「ひとり呑み込み」的で、とっ散らかった感じになった。個々をもう少し明晰に描いてくれてもよかったんじゃないか、こっちの集中力が弱かったのかも知れないけど。他人に息を吹き込むことと、ろうそくの火を消すこと(生まれたことを祝うこと)という二つの息吹が重なるラスト。心の空虚を互いに満たし合おう、といったメッセージを読み取れる。青年が何の迷いもなく空気人形を受け入れるとこは感動した(破れの修理)。しかし、ビデオ店の店長(人形であることにも気がつかない)や、もとの持ち主(心を持ったことに戸惑う)との対応の違いに、ファンタジー内のルールがあることはあるらしいが、そこらへんがもひとつクッキリしてくれない、どうもルールを十分呑み込んでないスポーツを観戦しているようなヨソヨソしさが、最後まで残った。空気を注入されてあえぐ、ってのでは『田園に死す』の春川ますみの空気女のほうが先輩、あれもよかったなあ。 【なんのかんの】さん [DVD(邦画)] 6点(2010-08-10 09:56:59) |
37.《ネタバレ》 なかなかよかったと思います。現実にはありえない、ファンタジーのお話ですが、そのファンタジーという手法を駆使して、現実を掘り下げようとする、そしてそれが見事に成功している、良質の一本です。他にない独特のアイデア、悲しくもあり、それでいてポジティブな希望を見いだせる清いラスト、そしてエロティックな作風も相まって、とても魅力的な作品だと思います。 【あろえりーな】さん [DVD(邦画)] 7点(2010-08-06 00:23:16) |
36.《ネタバレ》 人は誰も心に空白を持っている。ペ・ドゥナ演じる空気人形はその象徴である。しかし、空気人形はまさに人間の心の空白を埋めるために作られた心なき代用品だという事実が、皮肉な逆説性を帯びてくる。 ■空気人形は心を持つべき存在ではなかった。心は美しさを感じられるが、同時にはるかに多くの辛さ、悲しさも感じさせてくる。彼女に対して人々が求めるものは結局「自らの空白を埋めるもの」であったのであり、心持つ彼女がそれに答えるのは苦痛でしかなかった。そして逆に心持つものを心を埋める代用品にしようと腹を切っても結局そのまま死んでしまうだけであった。彼女の最後の息は他の人の心の空白を埋めていった。最後まで彼女自身は「人の心の空白を埋めるもの」でしかいられなかった。 ■ペ・ドゥナの演技は本当に素晴らしかった。あの「空っぽの中にわずかに心が宿ったような眼」は素晴らしい。いやらしさ・エロさを出さない裸というのも演技力のなせる技なのだろうか。圧巻 【θ】さん [DVD(字幕)] 9点(2010-08-05 01:06:58) (良:2票) |
35.「夜中に ふとテレビをつけたらやっていた映画でタイトルもわからずボーと観始めた」という環境だったら、かなり良い映画になった気がする。気合入れてDVDレンタルして、さあ観るぞ!というふうに観たらあまりこなかった。 【紫電】さん [DVD(邦画)] 4点(2010-07-05 22:03:45) |
34.《ネタバレ》 心を持つことのせつなさ、都会に暮らす人々の不安や悲しみはよく伝わったし、空気人形が製作者に会いに行って生きることや心の意味を少し理解するくだりなんかはグッとくるものがあった。 しかしなぜにあのオチに向かわなくてはいけなかったのかがよくわからなかった。 もしそれを理解し納得できたら点数上がるかもしれませんが現時点ではこの点で。 しかし板尾、演技うまいなぁ~。 【CBパークビュー】さん [DVD(邦画)] 7点(2010-07-04 00:55:56) (良:1票) |
33.《ネタバレ》 モンタージュで描かれる“からっぽの”一般人。でも、いわゆる成功者の中にも“からっぽの”人はいるだろう。であるから、引きこもりの女とかそういう病んだ人間と空気人形を対比させるだけでなく、もっと充実している人とも対比させたい。 ペデュナはセクシーなんだけども、人形のほうはそんなにエロくない。人形を人間よりエロく描けたらよかった。 |
32.《ネタバレ》 心を持ったら、切なくなった・・・ 是枝監督の作品は、「誰も知らない」「歩いても、歩いても」そして本作も、鑑賞後必ず小さな結晶のような塊を、残していくのは、何故だろう。そして、こんなにメルヘンな設定なのに、自然に感じさせる力量は流石だ。映像と音楽の美しさも絶品だ。特に彼女が詩の朗読をするシーンが忘れられない。細かい所も丁寧に見せている。たとえば、光を通して薄くなった影の表現など。また今回特に感じたのは、音である。雫の垂れる音、息使い、彼女が歩く度に聞こえるラムネの瓶の微かなの音、そして空気が抜ける音。とても繊細に素晴らしい音質で空間にとけ込んでいく。「ラースと、その彼女」と観比べてみるのも面白い。 【ブタノケ2】さん [DVD(邦画)] 9点(2010-06-11 04:36:19) |
31.《ネタバレ》 う~ん、なんというか、夢や希望の少ない映画でした。実にファンタジックで馬鹿馬鹿しい導入部分は、これからどうなるのかな、と期待感を抱かせてもらいました。ただ、後半に入ると全体のトーンが暗過ぎて…、ちょっと見るのがしんどかったです。「まだかな、早く終わらないかな」と120分が長く感じました。人形の目線から現実を見せるのはいいんですが、もうちょっと主人公の人形に優しい現実であってほしかったです。女優さんはよかったです。 |
30.童話ピノキオを初めとして人形が心を持つって古くから用いられている題材ですし、もっとメルヘンチックな作品かと思って見始めたら意外や意外、現実的な展開で驚いた。内容が内容なだけに嫌悪感を催す人もいるかもしれない。下品で申し訳ないが、例えるならレンタルビデオ屋の一角にあるAVコーナー独特の饐えた臭いとラムネ瓶に転がる透明なガラス玉のキラキラした感じ、生々しさと透明感が共存しており、無味無臭の空気人形というフィルターを通すことによって逆説的に人間の臭いを感じる良作。 【時計仕掛けの俺んち】さん [DVD(邦画)] 7点(2010-04-30 03:42:36) |
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29.これはファンタジーなのだ!と思い、割り切って観る、しかしすぐ話に引き込まれる。フッとありえないだろー的なシーンで我に返り、ファンタジーだと思い直し観るが、またすぐ話に引き込まれる。これの繰り返しが数回。話に引き込むのはペ・ドゥナの表情、我に返すのは周りの人間のエピソードとしょぼいCG、この構成が故意かどうかは解らないが、この緩急が「心」というテーマの軸をブラさずに続くので。後味は悪くない、そして何度もいろんなシーンを思い出す。 病んだ世界にポン!と放り出された、何かと対話するための生まれた特定の能力を持つ少女、心の部分には何も書き付けられていない、そこに人間との接触を通していろいろなものを書き付けていく、そこに書かれたものは愛なのか、悲しみなのか。そういう時にいやなものを書き付けないような人間になりたいものだ。これはアニメ「エウレカセブン」の1部分に良く似ている。 周期的に何度も観てみたい作品、気に入りました。 【カーヴ】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-04-22 10:39:29) |
28.《ネタバレ》 ここでの評価が高かったのでレンタルしてみました。ファンタジーなまま切なく終わるのかと思いましたがラスト前は結構、ブラックでした・・・。「空気を出し入れさせてくれ・・・」って「結局お前も人形(オモチャ)として扱うんかい!」と嫌な気分になりました(その後のシーンも)。全体的に何となく「自分には合わなかったかな」という感じです。人形という先入観からか(演技力?)裸が全然、いやらしく見えなかったのは凄いと思いました。 【より】さん [DVD(邦画)] 4点(2010-04-17 03:06:14) |
27.《ネタバレ》 吉野弘の詩「生命は」に併せて是枝裕和監督が描くのは、心を宿した空気人形と、心を持つがゆえに空っぽな人間たちの姿だ。詩が謳うように、生命はその内にあらかじめ欠如を抱き、かつ自分自身では完結できない不十分な存在だ。その欠如を満たしうるのは、花に訪れる虻や風、つまりは他者だ。だが、空気人形の持ち主である中年男は頑なに「他者」を拒む。はなから面倒な心など持たない道具だからこそ彼女を選び、そして文字通りの自慰行為により、空っぽを満たそうとする。過食症を患う若い女も、若さを失う恐怖に憑かれた中年女も、同様だ。失った妻と幼い娘の密かな思い出(映画『リトル・マーメイド』)を自分も識ることで、耐え難い欠如を満たそうとする父親もそうだ。彼らは自らの心が抱える欠如を他者が満たすなどとは、ゆめゆめ思わない。他者を拒絶し、不毛な自家受粉に励むばかりだ。そんな中、件の詩を彼女に教えた老人だけが、空気人形を価値ある他者として受け入れる。彼は、心ない子どもが「冷たい」からと無下に払いのけた、体温を持たぬ彼女のその手を評し、「手が冷たい人は心が温かい」と告げる。その言葉にほほえむ空気人形と彼は、その瞬間、まさに互いに幸福な他者として向きあう。そして奇跡のようにそれぞれの心を満たしあう。一方で、愛する男と息を吹き込みあう空気人形。美しい愛の行為が悲劇に転じるのは、男が真に求める「他者」が彼女ではなく、写真の中の女、だからなのだろう。空気人形は代用品であるがゆえ、彼を満たす幸福な試みに失敗するのだ。彼女はそれでもなお誰かのための他者となるべく、最期の吐息で蒲公英の綿毛を吹き飛ばす。過食症の女は部屋の窓を開け、こと切れた彼女の亡骸を見つける。そしてゴミ捨て場で光を纏うこの美しき他者に、ようやくその心を震わせるのだ。空気人形に扮したペ・ドゥナが兎にも角にもすばらしい。白痴美めいたダッチワイフとしての表層を纏いながらも彼女が繊細に体現するのは、まさに人間の内なる心の普遍的なその有り様だ。無機質なビニールの質感で表情を覆われた冒頭から、心を宿すがゆえ生き生きとした笑顔をこぼすまでに至る中盤、そして一転、心を宿すがゆえ心の抱え持つ空洞に呑み込まれ次第に笑顔を失っていく終盤へと、是枝は注意深く彼女の心とその移ろいを捉え続ける。心を宿した空気人形と人間、両者に一体どれだけの違いがあるだろうか、と。 【BOWWOW】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-04-09 23:57:50) |
【Yu】さん [DVD(邦画)] 3点(2010-04-05 00:35:24) |
25.《ネタバレ》 「空気が抜けるのってどんな感じ?」という質問は、「死んでいくのってどんな感じ?」と同義であり、空気を入れる行為は生命を吹き込むということ。映画内では明示されていないので、これは単なる想像に過ぎないが、ARATAの元恋人はバイク事故か何かで彼の目の前で亡くなったのではないか?死んでいく彼女を救うことができなかった彼の後悔と祈りが、「空気を抜き、吹き込む」という行為に及んだ。しかしそんな心の内を理解できるわけもない空気人形は、ただその行為の官能性だけを感じ取り、彼にも同じ思いを味わってもらおうと、彼の空気を「抜く」(「触ってくれんか?」と頼んだ老人の下半身に反射的に手を伸ばしたように)。しかし、空気人形は彼に生命を吹き込むことはできなかった。それは悲劇である。彼を燃えるゴミに出し、自らも燃えないゴミの中に埋もれた空気人形を見下ろし、「きれい…」と呟く星野真理は、冒頭の生命を宿した空気人形の姿と重なる。心なんてない方がいい。しかしそれは静かに育まれていくのだ。何と切ない愛の寓話。 【フライボーイ】さん [DVD(邦画)] 9点(2010-03-28 01:14:17) (良:2票) |
24.《ネタバレ》 映画館で約一カ月空けて2度観た。ある意味「映画」の枠を超えた素晴らしい映画だ。 ストーリーを追おうとしたり、リアルさをどこかで求めようとしたらこの映画は全く奇妙な映画だろう。でも、この映画は全編ほとんど「詩」のようである。それは、人間という、儚く、自分では解決できない弱さをいっぱい抱えているこの存在に対する限りないオマージュを、空気人形の目を通して描いた、映像による「詩」である。 しかもなんとぺ・ドゥナは、チャーミングなのだろう!! 特に、ARATAに心を寄せるようになった直後の、あの抑えられないような表情は、音楽の素晴らしさも相まって何と美しいことか。ここには、「心」を与えられた者の歓喜がある。そして「ハッピー・バースディ」である。自分で自分のいのちの誕生を祝うのではなく、「他者」がこの自分の存在を祝福して祝ってくれている。思えばこれが「ハッピー・バースディ」の歌だ。そして、それがあのラストシーンの「息」につながっていく!是枝監督、脱帽です!ここには監督の「祈り」にも似た思いを感じないではいられない。 原作本も読んだが、それをリスペクトしながらよくぞこのような作品へと再創造してくれたと思う。きっと、見る毎に思いが深められると思います。 【ワンス・モア】さん [映画館(邦画)] 9点(2010-03-22 10:32:40) (良:1票) |
★23.この映画は表現が多角的であり、色々な受け止め方ができると思う。 淡白ながらも静かで美しいBGMと映像が、じっくりと腰を落ち着けさせ、考えさせてくれる。本作の人々は生々しい姿を見せながらも、誰も声を荒げて感情表現しないし、誰も他人に悪意を向けたりしない。でも、善人というわけでもなく、どこか空っぽ。 淋しくて、苦しい彼らにとっては、心なんてない方が楽だったかもしれない。でも、ギリギリのところでとりあえず日々を生きるしかないのだ。 「あなたの代わりはどこにもいない」と、いつかそんな風に言われたい、思われたい、そして誰かを満たしたいと願いながら。
鑑賞後、ジワジワ来る。 【すべから】さん [映画館(邦画)] 9点(2010-02-19 10:41:05) (良:1票) |
22.せつなくてむなしい、淡い夢で満たされてもなにか儚い。空気人形ってそんな映画でした。 【よねぴー】さん [映画館(邦画)] 8点(2010-02-10 18:34:18) |
21.最初の30分では、面白くなるんじゃないかなと予感はあったんですが、周りが意外に冷静だった事に「うーん」でした。 【Yoshi】さん [映画館(邦画)] 4点(2009-12-10 16:41:11) |
20.「人形に心が宿る」という設定に対して、勝手にファンタジックであたたかな映画を想像してしまっていた。 これが是枝裕和の監督作品であるということを、忘れていたようだ。辛辣で生々しいテーマを独特のドキュメンタリー的手法で描き出してきた彼の作品が、そのような“癒し系”映画であるはずはなかった。 確かに、ファンタジックで心温まる部分もあるにはある。ただし、そういった部分は、淫靡で禍々しい物語の深淵によって覆い尽くされる。 恐らく、この映画の主演は日本の女優が表現するには、生々し過ぎて難しかったと思う。 そこに韓国人女優のペ・ドゥナを配したことで、彼女独特の愛らしさと、併せ持つつかみ所の無い空虚感が、まさに“空気人形”そのものであり、素晴らしかった。 これは女優としての優劣がどうということではなく、キャラクターに対しての国や文化を越えた「適正」の問題だったと思う。 そういう部分を見抜いて、奇跡的なキャスティングをみせた監督の力量は流石だ。 この映画における「救い」は、なんだったのだろうか。 “空気人形”が得た束の間の「生」か。誰しもが空虚を孕み、微かな部分でそれぞれが繋がっているという現実か。 穏やかな空気感の中で描かれる“実態”は、どこまでも禍々しくて遠慮がない。 正直、「好き」と断言できる作品ではない。 でも、この映画の世界観は、紛れもなく新しく、尚かつ世界の「本質」を捉えている。 「存在」すべき映画であることは、間違いない。 【鉄腕麗人】さん [映画館(邦画)] 8点(2009-11-30 10:49:10) (良:1票) |