1.この監督にとって、創造のテーマは常に「人生とは何ぞや?」というあまりにも根源的なものであり、そしてそれに、恐らく自問自答することに生涯を捧げるつもりなんだろうなー、と、エンドロールを見ながら思いました。というか、このテーマから離れられないんでしょう、きっと。寡作なのは無理もない話です。さて、本作ですが、そーですねぇ、評価は分かれるんじゃないでしょうか。「なんだよ、トト・ザ・ヒーローと同じやんけ!」か、「今度はそーきたか!」か。と書いておきながら恐縮ですが、私はそのどちらでもなく、「やっぱしそーか」でありました。予備知識はなるべく得ずに見たのですが、オープニングの鳩のシーンで「やっぱし・・・」と思ってしまったのでした。別にガッカリしたのではなく、むしろその逆で、ホッとしたというか。『ハロルドとモード』のオマージュと思しきシーンや、『トト・ザ・ヒーロー』とソックリのシーンもあり、相変わらず音楽は素晴らしい。映像も美しく、やっぱりこういうところのこの監督のセンスがすごく好きなんですね、私は。・・・きっと、ニモにとってのリアルはアンナとの人生ではなかったのだろうけれども、心の中ではそれがリアルだったのだと思う。これは、もの凄くそう思う。私は「あの時ああだったら・・・」という妄想はほとんどしないけれども、リアルとは別の人生がやはり心の中にあり、それもまた、私にとってのリアルに違いない、という状況にまさに今あるからで、そういうことって、歳を重ねると大なり小なりあって不思議ではないと思うのです。人生は、いくつかの必然と、無数の偶然で構成されているのだと、やっぱり本作を見て確信しました。どの偶然も、ただの偶然ではなくて、選ばなかった大多数の偶然も、それらは全て意味ある偶然なのです。若い頃見ても、きっと共感できなかった、あるいはサラ~ッと流してしまったであろうと思う作品です。