5.《ネタバレ》 “酒飲み”の者としては、いい歳をした中年男たちが、ティーン時代の親友たちと連れ立って“はしご酒”をするというこのくだらない基本設定が、逆に憎めない。
僕自身、着実に中年男に近づいてきている今だからこそ、サイモン・ペッグ演じる主人公の完全なる駄目男ぶりは、蔑みつつも身につまされるという妙なアンバランスを生む。
もちろん、エドガー・ライト監督とサイモン・ペッグ&ニック・フロストのゴールデンチームが生み出した最新作が、ただの“はしご酒”で終わるわけもなく、映画は突如としてとんでもない展開に突き進んでいく。
真っ当な映画ファンとしては、突如として繰広げられる急展開も「待ってました!」と言ったところなのだが、どうも全編通して塩梅がよろしくなかった。
端的に言ってしまえば、「ノリきれなかった」ということだろうか。
「ショーン・オブ・ザ・デッド」では”ゾンビ映画”を、「ホット・ファズ」では“ポリスアクション”を、多大なるリスペクトの念を持って娯楽性溢れるコメディ映画に作り替えたこのゴールデンチームだったが、今作はどうにも映画的なバランスが良くなかったように思う。
生まれ故郷の町で昔話に花を咲かせる酔っぱらいたちが、知らぬ間に町を支配していたエイリアンと闘う羽目になるというプロットは、馬鹿馬鹿しくもユニークだ。
けれども、揃いも揃って酔っぱらった主人公たちによるストーリーテリングは、あまりに纏まりに欠け、映画としての整合性が乏しかった。
馬鹿馬鹿しい話だからこそ、ストーリーの大筋には論理性が必要で、それが良いコメディ映画の条件だと思う。
過去のこの人たちの映画には、それがあったからこそ傑作になり得ていた。
今作では、突如として世界の瀬戸際に放り込まれた酔っぱらいたちが、酔いにまかせたまま破天荒に突き進む。
その先に酔っぱらいならではの小気味良いオチがあれば良かったのだけれど、結果的に世界は“取り返しのつかないこと”になってしまう。
想定外の困惑と後味の悪さは、決して褒められたものではない。
この邦題は少しばかり見当違いだ。せめて最後の「!」は「?」にでもしとくべきだろう。
くれぐれもお酒はほどほどに。“世界”を破滅させかねない。と、自戒せずにはいられない。