10.《ネタバレ》 夜7時を越え、その金網の奥の海辺に行くと撃たれても仕方がない場所が韓国に。北からのスパイの上陸に備えて日々訓練する沿岸警備隊。2枚目大スターチャン・ドンゴン演じるカン上等兵は他の隊員が遊んでいる中でも訓練する熱血漢。1人、闇にまぎれるため顔も塗る。そんなある夜、警戒態勢の中に忍び込んだカップル。カン上等兵は男を撃ち手榴弾をも使いころす。軍では表彰され、男の仲間や家族からは石を投げつけられる。 ここから気がふれる2人。1人はころしたカン上等兵。1人は目の前で恋人をころされた女。 この映画のすごいところはここから。本当にふれているのはこの2人だけなのか?本当は違うんじゃないか描写の連続。 兵役とは? 戦う相手はだれなのか? 国家の分断。 深夜に沿岸警備隊が襲われる場面の緊張感は凄まじい。 ギドク監督の海軍従軍経験もおおいに盛り込まれているのだろう。狂気を演出という点ではフルメタルジャケットに軍配があがるような気がするが、ギドク監督作品の中でも最も救いがないんじゃないかという展開と、帯びた強烈な社会性が作品を一つ上のランクに押し上げていると感じた。 グッジョブギドク。 【JF】さん [DVD(字幕)] 6点(2015-08-03 23:30:45) |
9.《ネタバレ》 キムギドク映画は救いようのない内容の作品が多いが、この作品は群を抜いて救いようが無い。モストオブ救いようが無い作品inキムギドクに認定致します。『受取人不明』も相当救いようが無かったが、僅かながら希望は残されていた。だが、この作品に全く希望は無く絶望のまま突き放して終わるので当然後味は悪い。気が狂った演技が圧巻のチャン・ドンゴンは凄い存在感で良かった。もう一人気が狂ってしまう女も登場するが、これは如何にもキムギドクらしいキャラクターだった。あと、相変わらず魚が印象的に使われている。 【ヴレア】さん [映画館(字幕)] 6点(2014-08-26 21:00:04) |
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★7.《ネタバレ》 監督が描きたかったのは狂気だろう。人類における最大の狂気は戦争だ。戦争という影におびえている韓国社会と軍隊に対する批判が見られる。「夜7時以降に警戒区域に侵入したものはスパイとみなして例外なく射殺する」という軍規は狂気そのものだ。識見が硬直しているのだ。 キム上等兵は軍務に忠実で、何の疑いも持たず軍規を固守する部類の人間。ある日、侵入者を発見して迷わず射殺するが、誤射と判明する。好奇心で侵入してきた民間の恋人同士の内の男性だった。一般社会では責任問題になるが、軍隊では表彰された上、休暇を貰う。キム上等兵は初めての殺人の衝撃と、誤射の悔恨で放心状態に陥る。そして、恋人に去られ、正気を失ってゆく。 一方で、恋人を目の前で殺された女ミアは衝撃のあまり、気がふれる。物語は軍隊がこの二人の狂人によって翻弄されてゆく様子を描くが、正に毒を持って毒を制するの観がある。 魚がしばしば登場するが、これは弱者たる人民を表わしているのだろう。狂女が軍隊である。狂女が水槽の魚を弄んで殺すのは、軍隊の暴発により人民が犠牲となることだ。狂女が水槽に入って水を血の色に染めるのは、軍隊が社会に悪影響を及ぼすことの比喩だ。軍隊という強大な権力に対して、人民は一方的な被害者でしかない。狂気は堕胎される必要がある。狂気は自らを滅ぼす。狂女は軍人を嘲笑いつつ、海中に姿を消す。キム上等兵は町中において、銃剣で通行人を刺す。軍隊という狂気の世界に投げ込まれた人間の成れの果だ。純粋であればある程狂気に染まりやすい。悲劇である。軍隊は狂気を孕んでいるぶん危険な存在なのだ。最終のキムの回顧場面で、ボール競技のコートに朝鮮半島の絵が浮かび、南北統一への祈願が示される。朝鮮戦争という狂気は、いまだに濃く朝鮮半島に影を落としている。 残念なのは、キム上等兵の狂気に現実味がさほど感じられないことだ。純真な人間として描かれるべきを、最初から激昂する軍人として描かれているので齟齬がある。誤射殺人と恋人に去られただけで、あのような狂気に陥るだろうか。彼の軍隊や殺人に対するこだわりやわだかまりが描かれてしかるべきだ。第二段、三段と、凄惨な出来事や体験を課す必要があるように思えた。暴力描写にも冴えが無い。 【よしのぶ】さん [DVD(字幕)] 6点(2008-02-04 04:31:48) |
6.《ネタバレ》 イメージとしては、「フルメタル・ジャケット」や「キャッチ22」の韓国版というかキム・ギドク版という印象を受けました(内容等違いはありますが、あくまでイメージです)。それに加えて、ラストは往年の角川映画を思い出してしまいました(私だけですかね)。 軍隊という、ある種異空間に送り込まれ心理的に追い詰められた若者達の姿を、キム・ギドクの狂気をはらんだ不思議な美しさを持つ世界観で描いていて興味深かったです。 【TM】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-12-05 12:42:46) |
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5.キム・ギドクの作品の中では、軍隊に所属していた頃の監督自身の経験が最も反映されているのではないかと思わせるような内容。ある事件をきっかけに内面から徐々に崩壊していく軍隊の様子を、独自の世界観と並行させて描き出すことに成功している。昨年公開された『父親たちの星条旗』を思い出してしまった。 【クルシマ】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-09-02 15:08:18) |
4.キム・ギドク+軍隊物なのでしんどい映画だろうなと想像していましたが、やはりしんどい映画でした。 一度見れば十分かなと思います。チャン・ドンゴンはそれなりに頑張っていました。 チャン・ドンゴンよく出演する気になったなと思いました。 |
3. あまりレビューがありませんね。こういう組織ってあるだろうな、と思うとなんだかイヤーな気分になります。見る価値はあると思いますが、スカッとする映画ではないので、誰にでもお勧めできるわけではなさそうです。 【海牛大夫】さん [CS・衛星(吹替)] 6点(2007-01-21 17:12:11) |
2.プロットから「民間人を誤射した兵士の苦悩」が描かれるのかと思ってたら、キム・ギドクがそんなありきたりな映画を作る筈も無く、チャン・ドンゴン演じる劇中の兵士は苦悩こそするものの、そこから一気に狂気へと走っていく。恋人を目の前でバラバラにされた女も気がふれ、やがて駐屯地から地域全体へと狂気が蔓延し始める…。通常のギドク作品は個の奥底に潜む人間の本能を描く寓話から普遍性を導き出してますが、本作はかなり社会性を持った「韓国映画」になってました。海岸線に戦場を「作り出し」、殺した相手が同胞の民間人でも兵士を表彰する軍隊。南北の軍事的緊張感が国中に広がり、徐々に国民をパラノイア化していく恐怖。本作は「グエムル/漢江の怪物」なんかとは目線の高さが違います、7点献上。 【sayzin】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2006-10-08 00:03:25) |
【SUM】さん [映画館(字幕)] 7点(2006-06-23 09:43:18) |