3.《ネタバレ》 若き日の泉ピン子の喋りが、とにかく過激で気風が良くて、圧倒される思い。
バラバラ事件の加害者を指して「学校の先生だったみたいだけど、工作の先生だったんじゃないか」暴行を受けて殺された七歳の女の子を指して「被害者は私と同い年だったから、犯人が私のところに来てくれれば玉蹴りをしてやったのに」などと言い出すのだから、恐れ入ります。
当時人気だったバラエティ番組が元ネタの映画であるそうですが、その悪趣味さに辟易すると同時に、どことなく(これを毎週観たくなる気持ちも分かる)と思えたりもしましたね。
文句を言いつつもTVを点けちゃう、嫌な話でも聞きたくなってしまうという、人間の好奇心を巧みに突いた番組だったのではないか、と推測する次第です。
肝心の映画本編なのですが、三つの事件を扱わっているにも拘わらず、その全てにおいて濡れ場が用意されているのだから、サービス豊かというか何というか、ちょっぴり呆れる思い。
最初の「西本明事件」では、犯人逮捕のキッカケが十歳の女の子の通報であった件など、オチもコメディタッチとなっており、この映画らしい題材であったのですが、残りの二つは、少々異質。
「風見のぼる事件」に関しては、当時まだモデルとなった犯人が有罪確定していなかった為か、尺も短く、中途半端な作りなのですよね。
不倫相手に刃物で襲われた末の正当防衛のようになっていたり、作中で犯人がファンに土下座するシーンを交えたりと、妙に同情的に描いているものだから、何だか観ていて醒めるものがありました。
そして「久保清一事件」は、作中の半分以上を占める長尺となっており、明らかにバランスが悪い。
ただ、それゆえに力が込められているのも事実で、これ一本だけでも映画として成立しそうなクオリティがありましたね。
とにかく犯人を演じた川谷拓三の存在感が凄くて、本当に(うへぇ、気持ち悪い……)と思わされるのだから、お見事です。
女性を絞殺した時の事を思い出して自慰に耽る姿なんて、良く引き受けたなと感心しちゃいましたし、逮捕後、面会に訪れた社会評論家に入れ知恵されて、自分の行いは横暴な国家権力との闘いだと言い出す件なんて、本当に憎たらしい。
「権力と闘うんだったら、どうして総理大臣を殺さなかった!」
「罪の無い娘さんを、何故殺した!」
「お前は単なる助平な強姦殺人犯じゃねぇか!」
と激昂する刑事の言葉も、至極もっともでしたね。
その後に犯人は、暴力を交えた尋問を受けたり、民衆に石を投げられて血まみれになったりもするのだけど、全く同情出来ませんでした。
かくして、すっかりシリアスな実録犯罪映画と化したところで、唐突に画面は「泉ピン子ショウ」へと切り替わり「強姦した奴はチン斬りの刑にしよう」と客席の笑いを取って終幕となる訳ですが、このギャップの激しさに関しては、評価の分かれそうなところ。
自分としては、なんだかんだで最後まで楽しめたりもしたのですが(眉をひそめる人も多そうだなぁ……)と、完全に他人事感覚で思えた映画でありました。