205.《ネタバレ》 アメリカンニューシネマを代表する『明日に向かって撃て』と共通点がいくつか。
ただ、切り口がまったく違うので好き嫌いが分かれるだろうけど、あちらのほうがずっと好みに合う。
それはキャラの違いが大きいのかも。
もともとはコンビニ強盗のせこい小悪党なので、大物感がない。
マフィアでもなく、銃のスペシャリストとか才能に秀でたわけでもない。
その分リアルではあるけれど、カッコいいとは思えない。
クライドが廃業になった銀行に押し入り、そこにいた行員をわざわざ連れ出しボニーに説明させるくだりは笑える。
そういうところは憎めないけど、写真のポーズからも感じる英雄にでもなったような自己陶酔がカンに障る。
暴走族や不良にあこがれる頭の悪い中高生みたい。
無軌道で稚拙だから、強盗の成り行きで人も殺してしまう。
そういう犯罪は今の日本でもニュースでときどき報じられるので、現実の嫌な気分を思い出させる。
物語の中だけで楽しむには、犯罪者という人物像の輪郭がはっきりしすぎているのだ。
それはマイナスだけでなくプラス面もあって、蜂の巣にされるラストシーンが生々しく活きてくるし、二人の最後にふさわしい名場面となった。
もしブッチとサンダンスのように銃撃前で終わっていたら、フラストレーションが溜まっていたところだ。
二人に好感を持つかどうかでラストの受け止め方が全然変わってくるだろう。
まったく共感を覚えなかったので、喪失感よりもスッキリしたというカタルシスのほうが大きかった。
警官サイドも人数をかけて何度も捕まえそうになりながら、素人のような寄せ集めグループに手こずりすぎ。
ボニーは母に会いたいと抜けたがるし、クライドの兄嫁とはよくある小姑のような仲違い。
犯罪組織の内部抗争というより、二世帯同居のトラブルでしかない。
実話ではもう少しプロらしい犯罪グループだったのだろうか。