36.《ネタバレ》 テンポのよい犯罪娯楽作品として楽しめました。
一つの事件を複数の時間軸で再構成してみせるやり方は秀逸です。
時間が戻りながらも少しづつ物語が進行し、謎が解けてゆくところにカタルシスを覚えました。
退屈はしませんでした。
事件を大統領暗殺(実は誘拐)にしたのは愛嬌でしょう。
ハイライトのカーチェイスシーンは手ぶれカメラの映像を短くつなぎ、臨場感を出していましたね。今後の映画の同シーンのお手本となるでしょう。
大統領を暗殺させて、実は影武者だったというひねりは面白かったです。
難をいえば、犯人側の心理が描かれていないことです。
シークレットサービスとカメラをもった黒人は心に傷をもっており、それがストーリーに上手に取り込まれていました。
しかし、犯人側は何を描かれてもおらず、誘拐の目的さえも不明のままです。
シークレットサービスの一人が仲間なので、計画は最初から成功したようなものだったはずですが。
どうしてリモート銃で暗殺したり、広場を爆発させたのでしょうか?
ホテルの中で自爆テロする必要もないでしょう。
それに肝心の誘拐実行犯が、特殊工作員の一人だけというのにも無理があります。
しかもこの人は弟を人質に取られて、脅迫されて仕方なくやっているのですから、本来ならうまくゆくはずがありません。
そして最後の場面で、市長のボディーガードを射殺しますが、これも意味不明です。
そんなことをして弟が無事で済むはずがありません。
逃走が失敗するのが、大統領の反撃と交通事故というのもマイナスポイントです。
もうちょっと知的なところを見せて欲しいです。
それから最初のシーケンスはテレビクルーでしたが、その後彼らは物語にからみません。
そりゃあないでしょ。もったいない。
もう少しシナリオをひねれば名作になりえた作品と思います。