4.《ネタバレ》 ほぼ自主製作である。製作から撮影、編集までこなした上で飢餓状態の主人公の役作りは尋常ではあるまい。
ロケによるジャングル撮影はみるからに過酷そうで、画面からは作り手の気迫と執念がありありと解る。
ハンディカメラによる荒々しい画面の揺れ。熱帯の太陽に焼かれ、乾ききった肌と顔貌の鬼気迫る凄み。
人体の損傷への拘りにあるのは誠実さだ。
モノクロの市川版からデジタル・カラーの塚本版へ。
炎のオレンジ、口角にこびりついた血の赤はより鮮烈であり、深い緑と空の青は対照的に美しい。
岩山だったクライマックスのロケーションはより原作のイメージに近い泉となり、「狂人日記」の章にあたる戦後のトラウマ描写も映像化されたが、
この後遺症のシークエンスが、現代ではより大きな意味を持つだろう。
書斎で「儀式」にふける主人公の後ろ姿が、凄惨な戦場シーン以上の恐ろしさでもって迫る。