30.《ネタバレ》 テリーギリアムの描く不思議な世界を久しぶりに見た。
テリーギリアムの描く”不思議の国のアリス”は現代風な現実を毒たっぷりにまた独特な視点で強く描き、
それが突拍子もないぶっ飛んだファンタジーと融合する面白いものだった。
最初の現実の荒んだ家庭内風景は「どこが不思議の国のアリスやねん!」って感じで
”不思議の国のアリス”とはあまりにかけ離れた雰囲気でびっくりしたけど。
でも場面場面で不思議の国のアリスのような美しくメルヘンな場面がみられた。
たぶん映画サイレントヒルでも子役を務めたこの少女は非常に美少女だった。
そんな美少女が変な男ときわどい場面がけっこうあったのでなんかドキドキした。
現実と幻想が入り乱れるこの作品で、嫌というほどに現実が浮き彫りになる。
この作品にあるファンタジーとはまったく無責任なものであると思える。
主役の少女にしたって登場人物にしたってみんな現実というものを全く見ようとしないので、
観賞者が逆に登場人物のことが心配になってくる。
そこでイラッとはしないけど気の毒になってくる。
特に主役の少女は自分の世界で生きるしかなかったから必死で自分の世界を作ってるような気がしてなんか健気だ。
宗教女はひどかった。彼女の言う「罪人」とは「自分以外の誰か」のことであるかのようで、自分の「罪」には立派に目をつむる。
そんな風に現実というものにちゃんと向き合っている登場人物が皆無なこの映画は非常にぶっ飛んでいる映画でした。
さらに野暮なこというと、自分の知る映画の範疇でいうと
ヤンシュヴァンクマイエルの人形、”悪魔のいけにえ”の食卓、”パンズオブラビリンス”の現実と幻想、”ミツバチのささやき”のラスト、
などをほのかに思い出させる場面があったかもしれない。これもまた個人的な感想。