2.《ネタバレ》 杉葉子と鎌倉に海水浴に来た池部良が遠い爆音にふと空を見上げると、航空機が一機飛んでいる。
彼女に「思い出す?」と問われる彼は何を思うのか。
また、転職の相談をする証券会社勤務の戦友がビルの屋上で「南方を思い出すな、あの雲は」という台詞をふと漏らす。
雑然と賑わう鎌倉や新橋、兜町などのロケーション撮影の中、それらの細部に「戦後5年」を垣間見せる。
南方戦線を含む過酷な戦場を体験した池部良を意識しての新藤脚本だろうか。
縦の構図を多用したロケ撮影による生々しい街の表情が主役でもある。
これも日本版ネオリアリズモといえる。
路線沿いの活気ある繁華街とは対照的な月島地区、クライマックスの深川地区などの発展途上地域の模様など、都市論の提示でもあろう。
夜明け前の時間経過を追いつつ展開するラストの緊迫した銃撃戦も素晴らしい。