★1.《ネタバレ》 石坂洋二郎の小説『草を刈る娘』の映画化で、日活でも吉永小百合と浜田光夫が主演の同名映画がありますが、これは本作『思春の泉』のリメイクなんです。ややこしいことに新東宝版も再公開されたときに『草を刈る娘』に改題されていて、現在観れるバージョンはこのタイトルになっています。 さてこの作品ですがいかにも石坂洋二郎の原作という感じの農村喜劇なんですが、実は掘り出し物でかなり面白いんです。舞台は東北のどこかの山村で、年に一度秋になると近所の集落から集まって馬草用の草刈りが行われます。この草刈りが木の枝や草でテントを作って泊まり込みのキャンプみたいな感じなんです。どっちの集落も長老みたいな婆さんがリーダーで、毎年お互いのグループの男女をカップルにして縁結びするのが愉しみというわけです。この草刈り合宿が実に大らかで好いんです。今年の縁結び候補は宇津井健と左幸子、宇津井はこれが映画デビューでさすが早大馬術部にいただけあって、裸馬をらくらく乗りこなしての初登場シーンはさっそうとしてました。左も本格的な主演はこれが初めてだったそうですが、やはりこの人は天才女優ですね、瑞々しいながらも農村の娘を生き生きと演じきっています。また性に大らかな農村の風俗がまた良いんですよね。左幸子の演じる娘も男性経験はないにしてもヤル気は満々で、「おら一生懸命子ども創るだよ、そして枯れた婆さんになりたいだよ」なんてセリフもあり、よく聞いたらとても生臭いことをこれだけカラッと言える女優は滅多にいないいんじゃないでしょうか。 監督は中川信夫で、朝日新聞で本作が好評だったのを観た森岩雄から東宝復帰のお誘いがかかったそうです。新東宝と言えばレベルの低いエロ・グロというイメージですけど、大蔵貢が来る前はこういう良質な文芸的なエロも撮ってたんですね。 【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-03-25 20:26:48) |