8. 観終わったあと、思わず「酷いな……」と声に出してつぶやいてしまった。
原作はF.P.ウィルソンの“ナイトワールド・サイクル”の幕開けを飾るベストセラー小説。吸血鬼伝説をモチーフに古代より続く悪と善の戦いを描くこの『ザ・キープ』は、確かにウィルソンの初期の作品だけにシリーズ中でも作風が垢抜けないと言うか、キレが無いと言うか、判りにくいと言うか……。正直、手放しに「面白い!」と言える小説ではない。
そしてこの映画である。テンポの悪い演出、繋がりの悪いシークエンス、暗くて観にくい画面、そこに差し挟まれる唐突な濡れ場……等などのおかげで、観ていても引き込まれる要素が全くない。いや百歩譲って、ホラーなのだから画面が暗いのは許したとしても、そこに被さるタンジェリン・ドリームのヤケに軽やかな音楽が雰囲気を台無しにしている。これはタンジェリン・ドリームが悪いのではないだろう、彼らに曲を依頼、採用した製作者のセンスの無さだ。
よく判らないキャラクター設定もそのままに、半ば強引に映画は進み、なんやかんやとドタバタし、唐突に終わるラストに至ってはもう絶句しかない。
いや、それより何が驚いたって、ここでの評価の高さ。原作を読んでいる自分でさえ「なんじゃ、こりゃ?」状態で観終わったのに……。むしろ読んで無い方が良かったのか?w