12.《ネタバレ》 セルフリメイク公開記念でYouTubeで期間限定配信されていた。
劇場公開されたもののすぐにVHS化して、Vシネマ(=低予算の極道もの主体)のイメージが強いようだが、
黒沢清の無機質で不条理あふれる世界によって異色の作品になっている。
何せ主要登場人物の背景が台詞でぼんやり明らかになるくらいで、
幾何学的な数式を教える新島の元には何故か幼い少女から高齢者まで集まっている不可解さ。
何度も繰り返され反復される、殺された娘の死因を述べる死亡報告書はただのルーティンに変わり、
静かに不安を煽る演出は杞憂に、行方知れずの男の居場所を淀みなく突き止める破綻した展開も、
まるでストーリーを何度も繰り返して知っているかのように。
娘を殺された宮下は被害者遺族であるのだが言動にどこか違和感があり、
裏社会と繋がりがあること、そして新島の教え子である少女への眼差しに、宮下もそういう"嗜好"だったのだろう。
新島にとってスナッフビデオに関わっていた宮下も、自身の娘の敵討ちの一人。
実の娘のスナッフビデオを見せられる地獄は彼にとって奥底に否定しがたい性的対象だったはずだ。
そこから場面が一転して、新島と宮下の出会いが再度描かれて映画は終わる(微妙に台詞が違う)。
もしかしたらそれぞれの理想のシナリオを求めて、ループしているのではないかと言わんばかりに。
'90年代後半はセカイ系やメタ要素が幾分流行っており、捻りに捻ってモヤっとした感がある。
26年経った現在の価値観で如何にリメイクとして調理していくか、黒沢清の手腕を見届けたい。