66.《ネタバレ》 事前情報を全く知らずに鑑賞したため、かなり驚かされることとなった。
ファーガスがジョディ(ウィテカー)に「(ディルと)結婚しているのか?」と問い掛けたときのジョディの返答から、確かに違和感を覚えたが…。
鑑賞中は「写真よりも実物は意外と大したことないなぁ」と思っていたが、その直感は間違いではなかったようだ。
だが、単なる驚きを与えるばかりではなく、「性を越えた恋愛」、「人間の性(さが)」などをきちんと描いた傑作だ。
ジョディはファーガスが「カエル」だと分かっていたのだろう。
だからこそ、ファーガスにディルを託したのではないか。
ディルはまさに「サソリ」だ。
「カエル」がいなければ、人生という名の川を渡れない。
もし、ディルの秘密が分かったとしても、ファーガスは自分の背中からディルを振り落とすような真似はしないと、ジョディは分かっていたのではないか。
ファーガスは「カエル」だが、ただの「カエル」ではない。
「サソリ」に刺されても、「サソリ」とともに川の底に沈むのではなく、「サソリ」も生かして、自分も生きようとする「カエル」だ。
この「サソリ」と「カエル」のカップルは、肉体的には結び合えないかもしれないが、感情面においては、強く結び合っているのが、よく分かるラストだ。
誘拐した側と誘拐された側ですら、分かり合えたのであるから、ファーガスにとってはディルと分かり合うことなど難しいことではない。
それこそがファーガスの性(さが)だろう。
一番分かり合えなかったのが、自分の同志というのが、皮肉な結果となっている。
それにしても、フォレスト・ウィテカーが凄い。
「ラストキングオブスコットランド」でアカデミー賞主演男優賞を獲得できたのは伊達ではないようだ。
「ラストキングオブスコットランド」の演技よりも、本作の方がインパクトがあり、非常に印象に残る素晴らしい演技だった。