5.《ネタバレ》 ジャン・ルイ・トランティニアンも良いが、アヌーク・エーメ(この時87才)に尽きる。
14歳で映画デビュー。「火の接吻(’48)」「恋ざんげ(’51)」「モンパルナスの灯(’58)」「甘い生活(’60)」、
そして「男と女(’66)」での演技は素晴らしかった。それから53年が経った2019年の続編。
「男と女」のラストシーンでは二人が結ばれる事を示唆して終わったあの後、
結局二人は結ばれる事なく(男が女から姿を消すことで)年月が経ってしまった事が窺われる。
男は老人ホームで昔の記憶が曖昧なまま。心配した男の息子は艶福家だった
彼の心に残っている唯一の女性を探し求め、再び会って欲しい旨を伝える。
作中では前作「男と女」のシーンが度々挿入され、彼らの記憶にあの輝かしい日々がよみがえる。
ただこの作品が良いのは彼らが老いらくの恋に引きずられる訳ではなく、「同じ時間を
過ごしてきた同士」として経験を糧にし、より人生において素晴らしい日々を過ごしていきたいと
感じているというか考えさせられるその演技、特にアヌーク・エーメの「眼差し」が素晴らしい。
実生活でも彼女自身恋多き女であった分、その想いはひとしおのはず。
フランス映画の歴史と文化あってのこの作品、邦画では全く出来ないモンだ。
本当に羨ましい。まずは名作「男と女(’66)」を見てから、機会があれば。
追記 (2024年6月) 結果的にこの作品が主演二人の遺作となったわけだけど、
この作品が遺作で本当に良かった、と思う。二人のご冥福をお祈りします。