190.《ネタバレ》 まさかSFモノがこんなに楽しいとは思いませんでした。
最後までラストが予測できず、食い入るようにして息を呑みながら鑑賞していました。
作品全体を通じて感じたのは、微妙で不気味な距離感から生まれるリアルさ。
20年以上も前の作品(私と同い年…)とは思えないほどの映像演出と迫力には脱帽です。
当時のCG技術や特殊効果を以っての出来栄えなのだと思うと、本当に制作陣には敬意を表したいと思います。
断片的に明らかになって行く”Thing”の正体は、未知なる部分とのバランスが常に不安定で、とてもスリリング。
誰が”Thing”に侵されているのかも判らず、いつ自分が侵されてしまうかも分からない恐怖。
仲間を信頼出来ぬ悲しさ、強まる猜疑心、掻き立てられる負の想像力、狂気、暴走。
彼らを纏う恐怖という空気は、果たして”Thing”によるものなのか、人の狂気によるものなのか。
極限に陥った時に人間が取るであろう行動は、非常に泥臭く生々しいです。
その人間臭さがしっかり描かれたからこそ、終盤に彼らが取る行動と決断に大きく衝撃を受けました。
彼らは、単なる英雄である事を望んだのではない。
”Thing”に侵された現状を目の当たりにしたからこそ、『人間としての尊厳』を保ったまま死にゆく事が出来たのかもしれません。
そして、音楽が最高に良かったです。
ラップ音のように不気味で不快感な高音や、焦燥感を煽るような鈍い低音。
クライマックスでは高揚感を最高潮に導きつつ、幕引きはあくまで静かに終わる上品さ。
誰かと思えばモリコーネ。 大変納得致しました。