1.《ネタバレ》 「追いつめられて」「13デイズ」のロナルド・ドナルドソン監督作品だけあり、緊張感ある作品に仕上がっている点が特徴だ。
また、本作の内容が実話かどうかは実際には定かではないが、リアリティのある内容に対して、「実話かも・・・」と錯覚してしまうほどのリアリティを醸し出しているのも特徴だ。
個人的に、上手いと感じさせる部分は、いくつかの対立軸を浮き彫りさせて、緊張感を高めている手法だ。
『「王女の写真」を巡る、MI5(又はMI6)と黒人ギャングとの関係』
『「汚職台帳」を巡る、売春関係者・汚職警官と警察との関係』
『「銀行強盗」を巡る、警察とMI5(又はMI6)との関係』
そして『「主人公」を巡る彼の妻と彼を愛する女性との関係』
これらの張り巡らされた関係の中に、突如放り込まれた主人公たちの困惑・焦りが見事に描かれている。
描き方によっては、「社会派映画」に仕上げることもでき、もっと複雑で緻密な玄人好みの映画に仕上げることもできたが、エンターテイメントを重視した軽めの仕上がりを選択したように感じられる。
この「エンターテイメント」と「緊張感」と「リアリティ」とのバランスが絶妙であり、なかなか好感がもてるものとなっている。
潜入していた女性の描き方を含めて、物足りなさを覚える部分はかなり多いかもしれないが、おかげでかなり見易くなっているのではないか。
70年代の古臭い事件をマジメに演出してもそれが正解というわけではないだろう。
ただ、車の中古屋のオヤジが、銃を持った殺し屋とレンガで立ち向かうというのはちょっとマイナスか。
アクション映画ではないのだから、あまりリアリティのないストーリーを展開させても仕方がない。
あそこは絶体絶命の危機に主人公に陥らせておき、最後の最後に「警察」に登場させればよかったと思われる。
ステイサムが殺し屋達を倒しても、倒さなくても結果は変わらない展開なのだから、なぜあんな展開にしたのかはやや真意が図りかねる。
オチの付け方に関しても、イマイチすっきりとはしないものだったが、実話の未解決事件なのだから、仕方がないところだろう。
偉い人と銀行強盗側との取引が既に成立しており、たとえ逮捕したとしても裁判で喋られてしまうのは困るという配慮があったものとは推測できる。