8.《ネタバレ》 遊園地を舞台にした映画なのですが、肝心の「アドベンチャーランド」の魅力が伝わって来なくて、その点が寂しかったですね。
こういう映画であれば「アドベンチャーランドに行ってみたい」「自分も主人公のようにココで働いてみたい」って思わせてくれる事を期待してしまうものなのに、そんな期待が見事に外れてしまった感じ。
景品を取られないようにする為、園内のゲームには色んな仕掛けが施してあるって説明していく件は面白かったんですが……
舞台が遊園地である必然性が感じられる場面なんて、精々そこくらい。
ただ単に「バイト先で出会った女の子と、紆余曲折を経て結ばれる主人公の話」ってだけなので、せっかくの舞台設定を活かし切れていないように思えて、勿体無かったです。
・主人公は仕事が見付からず、嫌々ながら遊園地で働く事になる。
・競馬ゲームの実況が下手で、それを経営者に叱られる場面がある。
という伏線があった以上、主人公が遊園地で働く喜びに目覚めていくとか、実況が上手くなって周りに認められるとか、そういう展開になるのかなと思ったのに、それも無し。
終いには主人公もヒロインもアドベンチャーランドから立ち去って、ニューヨークで恋の決着を付けて終わるというんだから、吃驚したし、同時に落胆もしちゃいましたね。
「主人公達はアドベンチャーランドから卒業して、大人になった」というメッセージなのかも知れませんが、それならエンドロールでアドベンチャーランドのCMを流して終わるのはチグハグだと思うし、どうもスッキリしない。
面白そうな舞台設定を用意したは良いけど、それを活かしきれなかったなぁ……っていう想いが強いです。
他にも「ヒロインのエルは不倫している」という秘密について、観客は序盤の段階で分かるようになっているのに、主人公は終盤になってから知る形なので、感情移入を阻害している事。
八十年代が舞台とはいえ、妻子のあるコンネルではなく、エルばかり非難を浴びる形なのは納得がいかない事。
主人公の勃起ネタを二回もやったのは、流石に狙い過ぎで白けちゃった事とか、色々と不満点が多い映画なんですよね。
主演は「ゾンビランド」のジェシー・アイゼンバーグ、監督は「スーパーバッド 童貞ウォーズ」のグレッグ・モットーラという事で、期待値も高かっただけに、手放しで絶賛出来ない内容なのが、非常に残念。
とはいえ、青春映画としてはキチンとツボを押さえた作りになっているし、決して嫌いな作風じゃないというか……
むしろ「好きな映画」と言えそうなんですよね、これ。
仕事終わりに同僚と酒を飲みながら駄弁るとか、プールで可愛い女の子と戯れるとか、そういう青春時代ならではの魅力的な一時が、しっかり描かれている。
「神様は信じないけど、愛なら信じる」「愛には、どんな事も良い方向に変える力がある」という主人公の台詞を裏切るかのように、宗教の壁によって結ばれないカップルが出てくる辺りも、良かったですね。
こういう挫折感、やるせなさも青春の醍醐味だよな、と思えたりして、しみじみ沁みるものがありました。
初めてのキスシーンや、好きな子と一緒に花火を眺める場面など「ロマンティックな場面では、ちゃんとロマンティックな音楽が流れる」という作りなのも、嬉しかったです。
こうして列挙してみると「気になった点」や「不満点」の方が「良かった点」よりずっと多いはずなのに、それでも終わってみれば(なんだかんだで、この映画好きだな……)と思えちゃうんだから、全くもって不思議ですね。
劇中にて、主人公とヒロインが惹かれ合うキッカケは「互いの好きな音楽」だったんだけど、自分としても「BGMのチョイスや、使い方が良い」ってだけで、この映画を好きになってしまったのかも。
また何年か経った後、今度は懐かしさと共に観賞してみたくなるような、そんな青春映画らしい青春映画でありました。